runより:最初に言っておきます。
この論文はかなり偏った資料になっています、化学物質過敏症とシックハウス症候群は別物ですが関連性まで否定し心因性を醸し出しています。
・原著
特発性環境不耐症の臨床所見―シックハウス症候群との比較―
吉田辰夫1),平田衛1),小川真規2)
1)関西労災病院環境医学研究センター・シックハウス診療科
2)自治医科大学保健センター
(平成24 年7 月11 日受付)
要旨:【目的】シックハウス症候群SHS としばしば混同される特発性環境不耐症(IEI,所謂「化学物質過敏症」)の病像を明らかにする目的で,
2005 年のシックハウス診療科開設後から2008年一時閉鎖までに受診したIEI 患者を比較対照としてのシックハウス症候群(SHS)患者と比較した.
【方法】IEI 患者42 名とその対照としたSHS 患者88 名について,既往疾患,症状,臨床検査結果の比較を行った.
【結果】IEI 群では,数が少ないが精神疾患とアレルギー性を除く目鼻の疾患の既往がある患者の割合が有意に高く,呼吸困難・息苦しさを訴える患者と少数であるが関節痛を訴える患者が有意に多かったが,皮膚発疹は逆に有意に少なかった.
臨床検査では総コレステロール値,総IgE,視標追跡検査の0.5Hz 時サッケード率において,IEI 群の異常者率が高かったが,有意差を示さなかった.
【結論】症状において,IEI とSHS は明確に異なることが明らかになり,症状の検討から心理社会ストレスや精神疾患の視点からの検討が今後必要と考えられた.
(日職災医誌,61:119─124,2013)
―キーワード―
特発性環境不耐症,シックハウス症候群との比較,既往歴,症状,臨床検査
はじめに
欧米では,1970 年代後半から1980 年代にかけて,熱効率を良くするために外気取り込み量を減らした建物における健康障害が密閉度の高い事務所ビルで問題となり「シックビル症候群」(Sick Building Syndrome,SBS)と言われた.
日本においても建物の高気密化が進んだが,「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」により事務所ビルにおいては換気等が管理されていたために,一般住宅の新築や改築時に健康障害が問題となり,「シックハウス症候群」(Sick House Syndrome,SHS)と呼ばれ日本において当時北里大学眼科の石川らがIEI を「化学物質過敏症」として一般向けに紹介した11)12).
彼らが研究交流を行った米国のW J Rea(Environmental MedicineCenter-Dallas)らの見解は米国では否定的13)14)であるにもかかわらず,その中でRea らの見解を紹介している.
また,石川とその共同研究者達は,前述の遷延したSHS 患者にみられる状態をIEI としつつ,それを「広義のSHS」としてSHS に含めている15)16).
IEI は,化学物質曝露による労働災害の申請によって認定された事例もあり,労災認定基準も設けられている17).
一方,職場での化学物質曝露あるいはSHS 後の事例で認定されなかった患者が裁判を起すなど,職業医学上の課題ともなっている.
本論文では,IEI の病像を明らかにする目的で,IEIの自覚症状,既往歴及び血液検査などについてSHS を比較対象として検討した.
SHS は化学物質による急性影響とみられ,症状以外には有効な検査がない点は健常者と共通する状態にあると考え,比較対照とした.
なお,本研究の特徴は,罹病期間が短いために修飾が少ないと推察される初診患者でおこなわれたことにある。