25 結論
早期警告からの遅すぎる教訓の最初の号は、技術的な革新を伴う予防(原則)と、政策決定者への行動要請の結果を調和させる難しさを強調した。
それからどのくらいの進展があったのか?
まず、予防(原則)的対策は革新を抑制するのではなく、むしろ、奨励するという証拠が増えている。
熟考された、または賢く調整された税の変更で支えられた場合は、とくにそうだ。
2001 年以降、知見の量が豊富になっただけでなく、意思決定に関わる利害関係者の数も増え、いっそう多様になってきた。特に気候変動、食の安全性、新しく現れたリスクの分野で、科学的な不確かさを知らせる意識も増えてきた。
しかし、他の分野での進展は少なかった。
例えば、政策の統合や各部門の調整が度々求められたのにも関わらず、政治的、科学的な「官僚的密室」がまだ残っている。
この密室は、世界のいくつかの地域で天然資源の予想外の破壊や、他の場合では、危害を妨げる警告にも関わらず、技術の世界的な普及につながってきた。
その結果は広範囲に及ぶ損害になり、汚染者の大半が汚染の総コストを未だに支払っていない。
それでも、世界が直面している問題、例えば経済的・財政的、気候・エネル
ギー、生態系・食物問題を、体系的で互いに連結する変化を維持するために、いっそう奨励される、新しく、変化させるアプローチが新たに現れている。
これらは、とくにエネルギーや食物生産の将来の進路を決定する際に、参加の増加やより社会的な責任、より大きな説明責任、高い透明性を要求し促進するために、消費者、市民、株主によるデジタル通信やネットワーキングの使用を増やすことにとくに関連する。
そこには、政治的、経済的社会制度が変化しなかった場合に起きる、環境の複雑さ、科学的無知と不確かさ、多くの有害な影響の不可逆性、社会の長期的利益に対する広範囲なリスクについてのより大きな理解がある。
さらに、いくつかの協力は、ビジネス・モデルと企業活動で持続可能な発展目標を基本的に受け入れている。
早期警告からの遅すぎる教訓の1 号と2 号の事例研究は、化学的、技術的革新の多様な範囲をカバーし、多数の体系的な問題を強調する。
それらは下記を含む。
早期警告信号に反応する社会制度やその他のメカニズムの欠如。誤解させる市場価格によって起きたか、社会や自然に対するコストやリスクが適切に内在化されなかった市場の失敗を集める方法の欠如。そして革新の進路における重要な決定が、既得利益や、大多数ではなく限られた人数で行なわれた事実だ。
事例史から得られる洞察と教訓は、確かに、答えの種をいくぶん提供する。
それらは下記で概要を述べる、一連の重要な行動についての知見も提供する。
もちろん、多くの疑問が残っている。例えば、複雑なシステムから発生する
避けられない驚きや不確かさに直面した場合、意志決定をさらに支えるために、予防原則はどのように使うことができるのか?
重大な害の「疑わしい」証拠に接した時に、行動を起こさない弁明として使われる「完璧な」知見の欠如を、社会はどのように避けることができるのか?
開発と使用の段階で対立する関心をどのように調和させることができるのか?商品と技術の利益をもっと公平に分配するにはどうしたらいいのか?