・EU農薬規制枠組みの進化
――有機リン系農薬・ネオニコチノイド系農薬の例
ベルギー養蜂研究情報センター ノア・サイモン
欧州における農薬規制に関する原則
欧州における農薬規制の基礎となる考えとして予防原則がある。
予防原則とは、環境に重大あるいは回復不能な影響を及ぼす脅威が考えられる場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも規制措置を可能にする考え方のことである。
指令91/414/ECによれば、欧州において存在する農薬は、その有効成分についてリスク評価を経た上で承認を得、ポジティブリストに登録されなければならない。
これは、指令制定時に既に使用されていた有効成分についても同様である。
リスク評価の前提として、メーカーは有効成分の有する毒性、残留性、水溶性などについての試験結果を欧州当局に提出し、当局の確認を経た上で、欧州委員会の承認を得る必要がある。
有機リン系農薬使用の原状
現在、欧州では有機リン系農薬はほとんど使用されていない。
これは、指令制定時に既に使用されていた有機リン系農薬につき、メーカーがポジティブリスト登録につき必要なデータを提出しなかったためである。
その理由としては、
①当時、有機リン系農薬には既に使用されていないものも多かったこと、
②他により有効かつ有益な製品であるとされていたネオニコチノイド系農薬が開発中あったこと、
③有機リン系農薬の一部は人に対してあまりに有毒であったこと、
④既に特許切れになっている有効成分が多かったこと、
⑤新製品の研究費の回収のために新製品の販売に力を入れる必要があったこと、などが挙げられる。