放射線のもつ「確率的な発がん/非発がん影響」「低線量域、内部被ばくでの影響」が無視されてきた
放射線による確率的発がんは必ず起こるものではなく、実験による捕捉が困難なこともあり意図的に無視されてきた。
ともすれば確率的なため不確定であり、不確定性のために切り捨てられてきた。
しかしながら不確定であることは、発がんが無いこととは根本的に異なる。
結果として放射線による発がんなどの健康影響は著しく過小評価されたままとなっている。
それをいいことに、原爆被ばく者の認定で急性白血病が政治的に無視されてきた。
他方、確率的な発がん以外の障害も、その生成への障害メカニズムの理解が難しいため研究が遅れている。
しかしヒトでは明らかに心臓や肝臓に影響が現れることが知られている。
子どもに異常が生じると、ことに早く亡くなった場合、おかしいとわかるので、被ばくとの関係が明らかになることも少なくない。
ところが成人の場合、そうしたことも本人の体質の問題などとして、葬りさられてしまった嫌いがある。実際、チェルノブイリがそうだった。
高線量でさえも影響は確率的なのだから、低線量になると検出はさらに難しくなる。
しかし、食品の安全性などにも関わるこの分野の研究は今こそ求められている。
内部被ばくの影響もよくわかっていない。
外部被ばくによるDNAの切断の結果おこる遺伝的影響が実験的に調べやすかったため、そればかりが論文になり議論されて来たに過ぎない。
内部被ばくの影響は、これまでは検証する簡単な方法がなかったこともある。
いまでは研究費さえあれば、次に述べる遺伝子の発現を調べる方法などがあり、実態を明らかにできると思う。
実際、セシウムの体内蓄積が臓器で差がないとは考えられない話である。「カリウムと同じで、体内でほぼ均等に分布する」などと言うことは不自然だ。
放射線の確率的な影響を遺伝子(DNA)の発現を調べることで網羅的に研究できるようになった
放射線で起こる可能性のある病気や障害は、遅発性のものが多く、様々な“がん”だけでなく、発がん以外にも多数ある。
それぞれを一つ一つ実際に起こってから調べるには膨大な時間と費用がかかる。
しかし、かつては研究できなかったこの分野も、最近進歩した数多くの遺伝子やその発現の変化を調べるマイクロアレイ技術を使えば、1匹ごとの放射線の影響をDNAレベルで解析できるようになっている。