中学生の授業を通して感じたこと
さて、一昨日、地域社会貢献の一環として、中学校の一クラスの授業を受け持ちました。
そこで「不法投棄問題から私達の社会を考える」と題したお話をしました。
不法投棄がなぜ起こるのかを社会構造の視点で考えれば、図1に示すように、廃棄物を排出する人が適正な処理費用を支払っていない、住民反対等で廃棄物を処理する施設が十分に整備できていない、リサイクル施設を整備しても価格や品質面からリサイクル材や製品を消費者が購入してくれない、といった理由から、廃棄物の適正な出口が確保されていないことが根本的な原因になっているといえます。
裏返せば、社会の在り様として、廃棄物を出した人が適正な処理費用を支払うこと、地域で必要な処理施設は迷惑施設であっても受け入れていくこと、価格が多少高くても品質が多少悪くても機能が十分であれば環境負荷の小さいリサイクル材や製品を購入していくことが、廃棄物の出口をつくり、不法投棄を無くしていく社会につながっていきます。
不法投棄問題は、実は私達の社会そのもののあり方を問うているのです。授業を行った後で担任の先生から、「不法投棄問題の背景に社会問題のいろいろな側面があることを初めて理解しました」という感想を頂きました。「将来の日本にとって、社会に対する多面的な見方が出来る人材を育てることが大切なのではないでしょうか」と私からもお伝えしました 。
図1 社会経済側面からみた不法投棄の問題構造
おわりに
今回の「近況」では、少し視点をかえて、私が眼にした高校生用教科書の内容をみて感じたこと、一昨日中学校で受け持った環境問題に関する授業の経験を通して考えたことを個人的「近況」としてご紹介しました。
今回は取り上げませんでしたが、「学校教育」だけでなく「家庭教育」も重要な役割を担っていることも忘れてはなりません。
今直面している災害廃棄物や放射能汚染廃棄物の問題解決に向けた研究活動に傾注している中であっても、将来の日本社会にとって「教育」がいかに大切かを認識して、私達研究者が出来ることをこれからも考えていきたいと思います。