Ⅳ 今後の課題
(1) 受動喫煙については、子どもや妊産婦など特に保護されるべき立場の者への悪影響が問題となっている。
屋外であっても、子どもや多数の者の利用が想定される公共的な空間(例えば、公園、通学路等)での受動喫煙防止対策は重要である。
しかしながら、路上喫煙禁止等の措置によって喫煙者が公園において喫煙するという状況がみられる。受動喫煙防止対策の基本的な方向性を踏まえつつ、対策を推進するために、暫定的に喫煙可能区域を確保する場合には、子どもに被害が及ばないところとする等の措置も検討する必要がある。
(2)
職場によっては従業員本人の自由意思が表明しにくい可能性もあることも踏まえ、職場において可能な受動喫煙防止対策について検討していく必要がある。
(3) たばこ価格・たばこ税の引上げによって喫煙率の低下を図ることは重要であり、その実現に向けて引き続き努力する必要がある。
(4) 国、地方公共団体等の行政機関の協働・連携を図るなど、受動喫煙防止対策を実効性を持って持続的に推進するための努力を更に継続していく必要がある。
また、諸外国におけるクイットライン(電話による禁煙相談)のように手軽に活用できる禁煙支援のための方策・連携体制の構築等について検討する必要がある。
(5) 受動喫煙の健康への悪影響について、国民や関係者が十分理解し、自ら問題意識をもって、共同体の一員として問題解決に臨む必要がある。受動喫煙防止対策を実効性をもって持続的に推進するためには、社会全体として受動喫煙防止対策に取り組むという気運を従来にも増して醸成することが重要であり、そのための効果的な方策を探るとともに速やかに行動に移す必要がある。
健康日本21や健康増進法、条約に基づき、今後とも受動喫煙防止対策を含めたたばこ対策を推進し、国民の健康増進を図る必要がある。
受動喫煙防止対策は、その進捗状況及び実態を踏まえるとともに、諸外国の状況や経験を参考にしながら、更なる対策の進展に向け、関係者の参画のもとで系統的な取組を行い、評価する必要がある。
Ⅴ おわりに
1) The Health Consequences of Involuntary Exposure to Tobacco Smoke “A Report of Surgeon General 2006
2) Glantz SA. Meta-analysis of the effects of smokefree laws on acute myocardial infarction: An update. Preventive Medicine. 2008;47;452-53
3) Pell JP et al. Smoke-free legislation and hospitalizations for acute coronary syndrome. N Engl J Med 2008;359:482-91
4) 平成20年12月25日「平成19年国民健康・栄養調査概要」:厚生労働省
5) 平成20年3月4日「脱タバコ社会の実現に向けて」:日本学術会議
6) 平成14年6月分煙効果判定基準策定検討会報告書:厚生労働省