・食用色素-食品成分間の機能的相互作用に関する研究
岡山大学大学院自然科学研究科 中村 宜督
ヒト急性前骨髄球性白血病細胞株HL-60を用いて、食用タール色素の光細胞死誘導作用を検討した結果、rose bengal (赤色105号) に加えて、phloxine B (PhB、赤色104号)、erythrosine B (赤色3号)に顕著な誘導効果が認められた。
PhBは光依存的にDNAラダー形成やcaspase-3活性化を誘導したことから、主要な細胞死様式はアポトーシスであることが明らかとなった。
このHL-60における細胞死はcatalase処理により解除され、PhBによる細胞内活性酸素量の増加もcatalase処理により有意に抑制された。
一方、ヒトリンパ球性白血病細胞由来細胞株Jurkatでの光依存性細胞死は、catalase感受性を示さなかった。
以上の結果から、細胞外で生成した過酸化水素が、細胞内に拡散することで細胞内の酸化ストレスを上昇させ、myeloperoxidaseのような細胞特異的経路を介してアポトーシス誘導経路を活性化することが示唆された。
さらに、食品に含まれる抗酸化物質 (α-tocopherol、cysteine) も、高濃度処理により光依存性細胞死を有意に抑制したが、比較的低濃度のcysteineは逆に細胞死及び過酸化水素産生を増加させた。
この結果は、Type I反応の律速段階で重要な励起色素の一電子還元反応を増強している可能性を示している。
このような濃度依存的な食品成分間相互作用の報告例は極めて少なく、食品加工や保蔵において、より安全に食用色素を利用する上で極めて意義深い知見であると考えられる。
また、食用タール色素の暗条件におけるNADPH oxidase依存性活性酸素産生阻害作用も見出したので、併せて報告する。
runより:うん、やっぱタール色素は危ないね。