21.6 ハーデル・グループ研究に対するスウェーデンの反応携帯電話使用と脳腫瘍のリスクに関する最初の発表(Hardell ら、1999a)は、学術誌へのレター論文で素早くフォローされた(Ahlbom とFeychting, 1999)。
彼らは、症例の選択的バイアスが、ハーデル研究で高い回答率を作り出したかもしれない、と示唆した。
しかし、その批判は根拠がなく、簡単に退けられた(Hardell ら、1999b)。
ハーデル等の全研究で、がんの疫学研究で訓練を重ねてきた脳腫瘍学者への回答率はいつも高かった。
これは、携帯電話に関係のない研究にも同様に当てはまる。
インターフォン研究のスウェーデンの部門では面白いことに、著者等の一人
(アンダース・アールボム[Anders Ahlbom])が、研究が始まる前でさえ、携
帯電話使用と脳腫瘍の関連性は生物学的に奇妙だ、と「意見」書で述べた(Adami等、2001)。
アールボム自身の研究では、頭上の送電線からの磁界被曝と小児白血病の関連性について証拠を提示している。
その関連性も生物学的な奇妙さに関わっていたのだろう(Feychting とAhlbom、1993)。
インターフォン研究のスウェーデンの部門に参加していたマリア・フェイチ
ング[Maria Feychting]は「その質問は、症例群と対照群の間で本当に同じ方法で置かれていたのか」どうかを尋ねた(Bj?rksten, 2006)。
実際にハーデル研究は同じ方法だったが、インターフォン研究では症例群と対照群の面談で異なる方法が使われたようだ。
例えば、臨床の面談は症例群でのみ行われた。
一方、ハーデル研究と電磁界からの潜在的な健康リスクのその他の証拠は、科学者のグループのバイオイニシアティブ報告で、この証拠を要約するよう彼らを発奮させた(バイオイニシアティブ・ワーキング・グループ[BioinitiativeWorking Group] 2007)。
同報告書は、新しく登場したリスクの証拠と、WHOの電磁界プロジェクトの声明や、リスクが無かったというその他の報告書(例えば、SCENIHR 2007)に賛同しない、少数派の専門家が増えつつあることを大勢の人々へ警告し、少なからぬ衝撃を与えた。
報告書「早期警告からの遅すぎる教訓」(EEA、2001)を制作した欧州環境庁
(EEA)は、有名な遅すぎる教訓14 例と電磁界の新しく出現した問題の関連性について一つの章を書くため、バイオイニシアティブ・ワーキング・グループに招かれた。
発表された証拠を考慮すると、EEA は、携帯電話からの脳腫瘍の潜在的なリスクについて慎重な早期警告を出すのに時宜が良い、と2007 年9 月に決意した(コラム21.2 参照)。