PM2.5と健康影響 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典:日本自動車工業会
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[研究・解明が進むPM2.5(微小粒子状物質)]

PM2.5と健康影響


東京女子医科大学 名誉教授 香川 順

はじめに

主要大気汚染物質は、気道刺激性があるため呼吸器への影響が主たる関心事であった。

しかし、粒子状物質(PM)、そのなかでも微小粒子状物質(PM2.5)は、呼吸器以外に多様な臓器等への影響をもたらすことがわかってきた。

疫学及び中毒学的研究が進むにつれ、呼吸器よりも心血管系への影響との因果性がより強く見られること、そして心血管疾患罹患者が多いことなどから、現在この因果性の機構解明に焦点が当てられているが、最近では、生殖、成長と発達、癌、突然変異誘発性、遺伝毒性、中枢神経系への影響も注目されてきている。


1.PM2.5の健康影響―科学的知見、US EPA(米国環境保護庁)の考え方

―EPAがPM2.5の健康影響の科学的知見に注目し、そのNational Ambient Air Quality Standards(NAAQS:国家大気質基準)を新たに設定した経緯―


1)米国におけるPMのNAAQSの経緯


米国におけるPMのNAAQSは、1971年にTotal Suspended Particulate(TSP:総浮遊粒子状物質)を指標とした年及び24時間値が初めて設定された。

TSPは、high volume sampler(高流量で大気中の物質を捕集する機器)で測定され、風速の影響を受け、カットポイントは25~45µmで、人が通常吸入しないような粒子も捕集するので、1987年に、吸入しうる粒子に重点をおいた空気動力学的直径が10µm以下のPM(PM10)に指標を変更し、PM10のNAAQSが設定(年平均値50µg/m3、24時間値150µg/m3)された。


その後、PMの健康影響に関する情報量が増え、これらの情報を整理したAir Quality Criteria for Particulate Matter(以下Criteria Document:CD)1)が1996年4月、その情報をNAAQS設定のためにわかりやすく整理したStaff Paper2)が1996年7月に公表され、そしてこれらの情報をもとにEPAは、1997年に、公衆の健康保護を強化するために、従来のPM10に加えて、新たに空気動力学的直径が2.5µm以下のPM(PM2.5)の年及び24時間のNAAQS(それぞれ15及び65µg/m3)を設定しFederal Register3)で公表した。

2006年には、その後のPMに関する情報を整理したCD4)をもとに、PM2.5のNAAQSの24時間値を65µg/m3から35µg/m3へと厳しくし、PM10の年基準値を廃止し24-時間値のみとしている5)。

さらに2009年には、新しいPMに関する情報を整理したIntegrated Science Assessment(ISA)for Particulate Matter6)が公表され、その後の情報も取り入れながら、現在PMのNAAQSの見直し作業が進行中である。


一方、わが国は、2009年に従来の浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準に加えて、米国のNAAQSに準拠した微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準値(年平均値15µg/m3、日平均値35µg/m3)を設定している。