PM2.5と健康影響2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・2)PMの物理的―化学的特性からみたPM2.5


PMの物理的・化学的特性に関する情報は、健康影響の解釈及び適切なPM指標の選択に重要である。

PMの発生源(移動及び固定)は多様で、またガス状汚染物質の大気中反応で二次的に形成され、PMそれ自体が物理的・化学的に多様な物質を含んだmultiple pollutants[多種(複合)汚染物質]である。


サイズ分布も多様で、大気中に浮遊している粒子は、粗大粒子と微小粒子の二峰分布を示し、微小粒子相はさらに超微小粒子(UFPs)と蓄積モードの二峰分布を示している。

一般に、微小粒子と粗大粒子の発生源は、非常に異なっている。

微小粒子は燃料の燃焼や高温の産業過程及びガス状汚染物質の大気中での酸化などから、粗大粒子は道路上に沈着した粒子(タイヤやブレーキの摩損、道路の摩耗粉塵など)や土壌の再浮遊及び燃焼産物のフライアッシュ(石炭を燃焼する際に生じる灰の一種)や建設作業などから発生する。微小粒子と粗大粒子の二峰性の分布の山の境界は1~3µmのところで重複している。


化学的組成を見ると、微小粒子は、硫酸塩、硝酸塩、多様な金属成分を含む化合物、元素状炭素など、粗大粒子は前述のように道路上の粉塵、土壌、フライアッシュや建設作業などからの粉塵が含まれ、微小粒子の方が酸性度も高く毒性が強い物質を多く含むことから、健康影響面からも微小粒子が注目されている1,2)。


3)PM2.5の健康影響の科学的知見とNAAQSの設定理由


1996年のCD1)の結論で、これらの最近の研究は、「重篤な健康影響(死亡率、慢性疾患の悪化、入院の増加など)が、米国の現行のPM10の基準以下の濃度でさえも、現在の米国の都市大気で見られるPMの大気レベルへの曝露と関連している」という証拠を提供していると述べている。

さらに「PMに関連した影響を裏づける疫学研究の証拠はかなり強固で、ほとんどの研究がいくつかのPM指標と関連した死亡率と入院の増加、呼吸器症状の悪化、肺機能の低下を確認している。

これらの疫学的知見のすべてを、統計方法の不適切さや不正確さ、濃度・影響モデルの選定ミス、研究計画や実施に潜むバイアス、健康エンドポイントの測定誤差、汚染曝露、気象あるいはその他の要因のせいにすることもできないし、またその他の要因の影響によりPMの影響が歪められたせいにすることもできない。

疫学研究の結果は注意深く解釈されるべきであるが、それにもかかわらず、これらの疫学知見は、現在のNAAQS以下のレベルでPMによる健康影響が検出されることを懸念しなければならない多くの理由を提供している」と述べている。さらに、感受性の高い集団(例えば、年配者、心肺疾患患者)や小児に対する有意な健康への悪影響(呼吸器症状の増加、学校の欠席、肺機能の低下)も指摘されている。


上記の視点から、EPAは、現行のPM10基準それ自体が公衆の健康を保護するのに不十分であり、これを改定することは妥当であると判断し、改定の科学的根拠に対する意見を求めるため公聴会などを開き、各界からコメントを求めた。


その結果2)、基準を改定することにより健康保護を強化するためには、2つの方法がある。

第一は、PM10基準を一層厳しくする方法、第二は、微小粒子と粗大粒子の組成の根本的な相違を認め微小粒子を含むPM10の重要構成分画について別々の基準を開発する方法である。

前者は、微小粒子を規制するために現行のPM10基準を厳しくすれば、粗大粒子に不必要な規制をかけることになる。

後者は、微小粒子と粗大粒子を規制する目標レベルを別々に定めることにより、もっと効果的かつ効率的な保護対策が設定することができるという考え方である。

Staff Paper2)は、この問題を詳しく検討し、入手できる最近の健康の証拠、微小及び粗大分画粒子間の組成の基本的な差及びPM10の実施経験に基づいて、PM10の微小及び粗大分画について別々の指標を開発するための十分な情報があると結論した。さらにEPAのスタッフは、以下のように結論した。


微小及び粗大分画間の比較を考慮すると、微小分画粒子は、現行の基準以下のレベルで死亡率と罹患率への影響と関連する粒子組成のよりよい代理者であることを示唆している。

対照的に、粗大分画粒子は、現行のPM10基準で許容されているレベル以上のレベルでの一定の影響とより関連していそうである。

PM10基準によって提供される保護を増加させる代替アプローチを検討した結果、スタッフは、現在のPM10基準のレベルを低下させることは、これらの健康影響に対して最も効果的で効率的な保護を提供することにはならないだろうと結論した。


PM10の影響から、微小粒子分画または粗大粒子分画の粒子の影響を区別することは難しいが、Staff Paperは、現行基準より下のレベルでの死亡率や罹患率への影響と関連しているPM組成をより良く代表しているのは微小粒子であることが示唆されていると述べている。