・Ⅳ.予防の方法
可能な場合、潜在的に有害な活動の計画段階で、最大の影響から安全にするために、予防行動をとるべきである。
予防原則は、予防を行うための防止法が実施されなければ、その目的を果たさない。
さもなければ、程度が低くとも、リスクが変化するか、問題が残るだろう。
しかし、予防行動の幅は弱いものから(問題の集中的研究)から強いもの(特定活動の禁止や段階的廃止)まで、考えることができる。
予防方針を実施するために多数の手段が世界中で使われている。
禁止と段階的廃止。禁止や段階的廃止は最も強い予防行動であると考えられている。
少なくとも80か国は、少数の非常に有毒な物質の生産や使用を禁じている。
北欧諸国は、一般人の健康戦略として、禁止措置(そち)の採用を特に進めている。
これらの諸国は、禁止と段階的廃止を、非常に有毒な化学物質や危険な活動による損傷や病気のリスクをなくす唯一の方法であると、考えている。
カドミウムと水銀を含む数種の化学物質は、現在、スウェーデンでは段階的に禁止されている。国際合同委員会*(後の考察を見よ)は、五大湖地域で産業用塩素系化学物質の段階的廃止を勧告している。
* International Joint Commission
クリーンな生産と汚染防止。クリーンな生産には、発生源で汚染を減す製造システムや製品の変更がある(製造工程や製品開発段階で)。
持続可能な製品デザインや生物に基づいた技術*・製品生産で消費される材料やエネルギーへ配慮しながら、また製品に対する基本的な需要を問いながら、クリーン生産活動は製品自体の危険に向けられる。
* bio-based technology
かわりのものの評価。かわりのものの評価は、予防の根底にある要素と同様、受け入れられている方法論である。
例えば、米環境政策法*は、連邦政府に、なにもしないという方法を含む、かわりの方法を、潜在的に環境に影響するとはっきりしている活動(あるいは資金提供する活動)すべてについて、調査することを求めている(環境影響声明中で)。
市民は、あらゆる選択肢が考慮されない場合、裁判に訴える権利を持つ。ヨーロッパの数か国は、全潜在的産業汚染者に対するこのような計画を始めた。
マサチューセッツ工科大学のニコラス=アッシュホードは、技術選択肢評価**という化学事故防止のための仕組みを開発した。
この仕組みのでは、会社はかわりの主な防止技術の包括的アセスメントをすることを求められ、もし安全なかわりの方法が選べない場合、会社の決定が正当化される。
* U.S. National Environmental Policy Act
** Technology Options Assessment
健康に基づいた職業被ばく限度。数年間に渡って、米国の産業衛生専門家は、健康への影響が認められる最低の被ばくレベルに基づいて、職業被ばく限度リストを作っている。
これらのレベルは、新しい職業被ばく限度として提案されている。
逆転した化学物質記載責任。デンマークと米国での提案は、化学物質とその影響に関する情報の開発を進めるために提案されている。
デンマークでは、ある化学物質で十分な毒性情報が利用できない場合、その化学物質群の中で最も有毒であると考えることを求る提案が出されている。
米国の提案では、大量に生産される全科学物質は、それに関する基本的毒性情報がない場合、放出と廃棄の報告に関して、毒物放出インベントリーに付け加えられる。
有機農業。
米農務省は、新しい技術や物質が有機農業で認められるかどうかを決定する規則として、予防原則を使うことを考えている。
これらの決定は現在、「重大な劣化*」の証拠に基づくリスクアセスメントによっているが、有機農業はそれ自体予防的アプローチに適している。
有機農業は、害の証拠を待つよりは害を起こす物質や活動を避けるという原理を前提として、リスクを嫌う。
* measurable degradation
生態系管理。生態系の複雑さと地理的範囲は科学的な不確実性を増加させ、過誤の結果は荒廃させることがあるため、生物多様性の問題は予防原則に良く合っている。
リスクアセスメントやほかの方法では、海の生態系の荒廃や漁業が崩壊するので、このような大失敗を予測し防ぐことができない。
疫学のように、生態系の管理は科学哲学と人的介入に対して、新しいアプローチを求めている。
予防原則を採用することは、例えば、介入が可逆的で柔軟でなければならないことを示している。
市販前あるいは活動前の試験の要求。連邦食品医薬品法は、全新規医薬品を市販前に安全性と有効性について試験しなければならないことを、求めている。
このモデルは、工業化学物質やそのほかの活動に応用できるだろう。