・診断基準 [編集]
日本疲労学会診断指針 2007 [編集]
6か月以上持続する原因不明の全身倦怠感を訴える患者が、下記の前提I, II, IIIを満たした時、臨床的にCFSが疑われる。
確定診断を得るためには、さらに感染・免疫系検査、神経・内分泌・代謝系検査を行うことが望ましいが、現在のところCFSに特異的検査異常はなく、臨床的CFSをもって「慢性疲労症候群」と診断する。
〔前提I〕 病歴、身体診察、臨床検査を精確に行い、慢性疲労をきたす疾患を除外する。
ただし、抗アレルギー薬などの長期服用者とBMIが40を超える肥満者に対しては、当該病態が改善し、慢性疲労との因果関係が明確になるまで、CFSの診断を保留し、経過観察する。
また、気分障害(双極性障害、※精神病性うつ病を除く)、不安障害、身体表現性障害、線維筋痛症は併存疾患として扱う(※妄想や幻覚を伴ううつ病の場合に、精神病性うつ病と呼ばれる)。
〔前提II〕 〔前提I〕の検索によっても慢性疲労の原因が不明で、以下の4項目を満たす。
1.この全身倦怠感は新しく発症したものであり、急激に始まった
2.十分休養をとっても回復しない
3.現在行っている仕事や生活習慣のせいではない
4.日常の生活活動が発症前に比べて50%以下になっている。あるいは疲労感のため、月に数日は社会生活や仕事ができず休んでいる
〔前提III〕 以下の自覚症状と他覚的所見10項目のうち5項目以上を認める。
1.労作後疲労感(労作後休んでも24時間以上続く)
2.筋肉痛
3.多発性関節痛(腫脹はない)
4.頭痛
5.咽頭痛
6.睡眠障害(不眠、過眠、睡眠相遅延)
7.思考力・集中力低下
8.微熱
9.頚部リンパ節腫脹(明らかに病的腫脹と考えられる場合)
10.筋力低下((8)(9)(10)の他覚的所見は、医師が少なくとも1か月以上の間隔をおいて 2回認めること)。
今回、CFSに加え、特発性慢性疲労(英: idiopathic chronic fatigue、ICF)という診断名が追加された。
上記前提I, II, IIIに合致せず、原因不明の慢性疲労を訴える場合、ICFと診断し、経過観察する。
従来の「CFS疑診例」に相当するものだが、ICFは国際的に通用する用語であり、ICFという病態は患者に説明しやすく、診療報酬の観点からも有用と考えられている。
厚生省診断基準案 [編集]
1.大クライテリア(大基準) 1.生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヵ月以上の期間持続ないし再発を繰り返す(50%以上の期間認められること)。
2.病歴、身体所見、検査所見で別表に挙けられている疾患を除外する。
2.小クライテリア(小基準) 1.症状クライテリア(症状基準)-(以下の症状が6ヵ月以上にわたり持続または繰り返し生ずること)
1.徴熱(腋窩温37.2~38.3℃)ないし悪寒
2.咽頭痛
3.頚部あるいは腋窩リンパ節の腫張
4.原因不明の筋力低下
5.筋肉痛ないし不快感
6.軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感
7.頭痛
8.腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛
9.精神神経症状(いずれか1つ以上): 光過敏、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、混乱、思考力低下、集中力低下、抑うつ
10.睡眠障害(過眠、不眠)
11.発症時、主たる症状が数時間から数日の間に出現
2.身体所見クライテリア(身体所見基準) - (少なくとも1ヵ月以上の間隔をおいて2回以上医師が確認) 1.微熱
2.非浸出性咽頭炎
3.リンパ節の腫大(頚部、腋窩リンパ節)または圧痛
CFSと診断する場合 - 大基準2項目に加えて、小基準の「症状基準8項目」以上か、「症状基準6項目+身体基準2項目」以上を満たす
CFS疑いとする場合 - 大基準2項目に該当するが、小基準で診断基準を満たさない
感染後CFS - 上記基準で診断されたCFS(「疑い」は除く)のうち、感染症が確診された後、それに続発して症状が発現した例
但し、以上の基準は初期研究段階において、研究対象にする患者を厳格にふるい分けるために作られたものであり、小クライテリアが多く、また、精神疾患を持っていればCFSから除外という問題のある診断基準であるので、実際の診断にはもっと基準を緩めてもいいのではないかという意見が、一線の研究者からも出ている。
また、CFS患者特定の検査は、近年諸処現れているものの血液などの化学検査でそれ一つで確定できるようなものはない。
現在では、症状を示す他の疾患である可能性を除外する除外診断が一般的である。
このため、客観的にCFSを鑑別できるバイオマーカーの必要性が叫ばれていたが、大阪大学・大阪市立大学共同チームにより、血液 1,2mlに近赤外線をあて、約95%の確率で鑑別できる近赤外線分光法が最近開発された(しかし、CFS患者特有のスペクトルを起こす血液中の物質はまだ特定できておらず、研究プロジェクトを立ち上げる予定)。