・「β-カロテンの教訓」とは?~長村氏講演(7)
2012年12月14日 07:00
疫学調査で、ニンジンや緑黄色野菜などの野菜を取る人たちは、がんになりにくいというデータがあり、これらの共通因子として、「β-カロテン」が注目された。
β-カロテンはレチノール(ビタミンA)になり、レチノールの血中濃度が高い人は「口腔ガン」「消化器ガン」「肺ガン」にかかり難く、β-カロテン含有量の多い食事をする人ほどガンになりにくいことが明らかになった。
なので「β-カロテンを投与すれば、ガンをはじめ病気が防げて健康になるのでは」として実験が行なわれた。
しかし、β-カロテンを投与した人の方が、投与しない人より「肺ガンになった」「心筋梗塞になった」という逆の結果が出てしまった。
どうしてこうなったのか。
今は抗酸化物質のプロオキシダント作用が、一つの原因だと考えられている。
要するに、抗酸化物質は、適量存在するときには活性酸素を食べてくれて、抗酸化作用としてさまざまな障害を抑制するが、過剰になると活性酸素が大量に出てこれがプロオキシダントとして作用し、組織の障害を起こしてしまう。
このようにして、β-カロテンのネガティブな試験結果の原因は「量の問題」ということがわかった。
β-カロテンは現在、1日30mg以上は取らない方がいいだろうと言われている。
業界は、大規模な投与実験をするまで、このことがわからなかったという重要性を認識しなければならない。
危険の予知には非常に難しい要素があり、この問題は量の重要性を明らかにした。
したがって、アントシアニンも投与量と投与の方法は、慎重に決めていく必要がある。
まとめると、アントシアニンは有効性を期待させる素材であるが、有効性と安全性に関してさらなるデータの蓄積が必要である。
また、商品として出されるときには、複合物であるため品質の保持に重要な問題がある。
健康食品として扱う場合、GMPを始め厳しい品質管理が必要である。
(了)
【山本 剛資】