・人間の研究
マンガンに大きな吸入被ばくをした労働者で呼吸器症状や肺炎・気管支炎が起こっている。
マンガンの明瞭な神経への影響は、マンガン鉱山や精錬工場の労働者で最初に気づかれた。
「マンガン症 Manganism」には、振戦と運動異常があり、衝動的に走ったり、戦ったり、歌ったりする特徴がある「マンガン錯乱manganese madness」が先立つことが多い。
マンガン症の運動障害はパーキンソン病にいくらか似ているが、はっきりした違いがある。
何人かの研究者が、成人のマンガン被ばくによる神経障害の早期の兆候を検出しようとしてきた。
ある研究者は、良く知られた運動障害に加えて行動や感情影響を含むマンガン被ばくによる障害の連続性を記載した。50
別の研究者は、低レベル被ばく後のマンガン神経毒性の初期兆候を調べるために行動学的方法を用い、応答速度や運動機能・記憶に影響があると結論した51。
いくつかの研究は、子供の毛髪中マンガンレベルと多動性や学習障害との間の関連を報告している。
人工乳を与えられている乳児の毛髪中マンガン濃度は、出生時の 1 グラムあたり 0.19 マイクログラムから、生後 6 週の 1グラムあたり0.965 マイクログラムと増加し、生後 4 か月で 0.685 マイクログラムへと減少したと、ある研究者は報告している。
母乳を与えられている乳児では、生後 4 か月で 1 グラムあたり 0.330 マイクログラムにしか増加しなかった。
この研究で、年齢を同じくした多動ではない対照で、1 グラムあたり0.268 マイクログラムであるのに対して、多動児の毛髪中マンガンレベルは 1 グラムあたり 0.434マイクログラムであった52。
対照の グラム 1中 0.58 マイクログラムに対して、多動児で毛髪マンガンレベルは 1 グラムあたり 0.83 マイクログラムであることを別の研究が報告している。53
また、この研究は多動児で鉛レベルが上昇していることを発見した。
第 3 の研究も、対照より注意欠陥多動性障害の子供で毛髪マンガンレベルが高いことを報告している54。
神経毒性のメカニズム
一生の始めに過剰のマンガンに被ばくした動物は、神経伝達物質ドーパミンやノルエピネフリン、セロトニンのレベルの低下を示す55。
ネズミ類で妊娠中のセロトニン枯渇は、大人の同じようなセロトニン枯渇よりも子供の脳で一層広汎な構造変化を起こすことをある研究が報告している。
脳の発達で神経伝達物質の重要な役割に照らせば、この結果は驚くことではない。56
結論
マンガン毒性に発達中の脳が影響を受けやすいことは、一層注意するに値する。
多くの人工乳がマンガンを規則的に補充している。
栄養専門家は母乳はこの必須元素が少ないと考え、補充は有害でないと考えてきた。
大豆をもとにした人工乳は一層多い量の天然マンガンを含んでいる。しかし、代謝の研究は、子供は大人よりマンガンを多く吸収し少なく排泄することを示している。
さらに、血液で運ばれるマンガンが幼児では大人より容易に脳に入り込む。動物での研究は、発達中のマンガン被ばくは多動性と関係することを示している。
いくつかの研究は、毛髪中マンガンレベルは対照より多動性障害の子供で高いことを示している。これらの観察は、この金属を補充した人工乳やガソリンへの MMT 添加の知恵に疑問を呼び起こし、未解決の不確実な領域を明らかにするために緊急の研究をすることが必要である。
ガソリンのオクタン価を鉛であげたことから学んだように、集団規模の被ばくは、低レベルであるが、時に深刻で意図しない結果を生じる。