・出展:環境汚染問題 私たちと子どもたちの未来のために
http://www.maroon.dti.ne.jp/bandaikw/
・第3章:発達障害のスペクトラムとその一般人の健康への影響
http://www.maroon.dti.ne.jp/bandaikw/child/InHarm'sWay/clinical_spectrum.pdf
病名の中に何があるか-進化中の作業定義
学習障害や行動障害・発達障害は、微妙学なものからひどい状態までの、幅広い範囲の障害である。
種々の症候群の間を、および「異常」から「正常」を区別することは、かなりの考察を要し不確実である1。
これらのことに関して合意がないことは、診断と分類に対する多数の代わる代わるの方法と、古い症候群が再定義され2、新しいものが現れる頻度に反映されている。
結果として、これらの障害は、堅固な診断的実在としてよりは、進歩中の仕事として最も良く特徴を現すことができるだろう。
診断の困難さは驚くことではない。
というのは、学習や行動・発達障害は科学的指標(独特の症状や血液検査・身体的特徴のような)がないためである。
現在の科学的知識の限界も、これらの障害の生物学的土台の理解を妨げている。
肉眼的脳構造は通常正常に見えるが、土台となる問題は、神経回路や細胞・細胞より小さい構造・機能のレベルに存在すると、多くの人が考えている。
3,4,5,6 これら詳しいことの大部分は現在の科学の限界を超えているので、これらの障害の生物学的基礎はほとんど分からないままである。
結果として、発達症候群は、子どもたちがどのように見えるかあるいは振る舞うかといった臨床症状によって定義されている。
このように定義している症状は非特異的であるため、それぞれの症状は多くの発達や医学・精神学的状態の一部として、そして正常な子供でも生じるだろう。
7,8 発達障害は、 (精神疾患 DSM-IVの診断・統計マニュアル4 版)として知られている分類体系に従って診断されることが最も多い。
分類の明確な体型として、DSM-IVは「主に主観的一致に基づいて臨床的に由来した分類カテゴリー」を使う9。
DSM-IV は一般的に認められている精神障害を診断するために、基準を列挙している。
これらの基準は一般に症状と期間・例外を含んでいる。発達や学習・行動障害の診断基準の部分的リストに関しては、35 ページの表を参照されたい。
観察者は、この診断体系の多数の欠点、カテゴリー分類に伴うことの多い問題を突きとめている。それには次のものがある10。
1. 経験的基礎がないこと
2. 個々の分類をするのに、主観的・印象主義
的基準に頼ること
3. 原因に関する確証のない仮定
3.病因に関する確証のない仮定
4. 診断名を指定するための客観的で有効な基
準がないこと
5.診断基準に周囲の影響を統合することに
失敗
6. 治療に実証された適切性がないこと
経験に由来する統一された分類の枠組みがないことにはいくつかの重大な必然的結果がある。
臨床実務に関する相当の影響は、ある観察者によって次のようにまとめられている。
「現実的に見よう、このことが意味するものは、大部分の診療所で使う精巧な手順を終えた後に子供が分類されることである。
正確に言えば、先ず彼について知っているのは、彼に問題があるということである」11。
その他に主観的診断基準に依存する結果として、30%までの親が自分の子供は 3 つ以上の異なる診断をされたと報告している。
統一した枠組みがないことは専門家の間で情報伝達を困難にしており、同じ障害を異なる名前で呼び、あるいは異なる障害を同じ名前で呼ぶ。
これらの懸念は、2 人の著名な研究者アッシェンバッハとエーデルブロックによって、「子供の精神病理学研究は訓練や治療・疫学・研究が統合できる首尾一貫した分類学的枠組みを長い間欠いてきた」という彼らの発言の中に要約されている13。
幸運なことに、学習や発達障害の最近の研究は、子供の障害の診断と分類の改善に焦点を合わせている14。
このことはもっと意味のある診断名の使用を確立するであろう。その他に、分野間で方法や用語・概念・知識を統合することが重大であるという認識が増えている15。
このことは、基礎となるメカニズムや原因・治療・予防に関する研究を、結局は改善するだろう。