災害発生当日は、被災者を含め作業員12人が、午前8時ごろからホテル増築工事現場の地下1階のスラブのコンクリート打設に取りかかっていた。
当該作業はコンクリートポンプ車による打設で、コンクリートをならすためにバイブレーターを2本使用していた。
被災者の作業は、このバイブレーターのホースの介しゃくで、ホースが鉄筋や障害物に引っ掛かるのを避け、作業を円滑に行うものであった(図)。
通常の作業日では、午前中に10時ごろから30分ほどの中休憩を取るが、当日はコンクリート打設作業のため中休憩を取らず作業を続け、正午から1時間昼食休憩をはさみ、作業を引き続き行っていた。
午後2時15分ごろ被災者が、急にひざまずいてうずくまったので同僚が問いかけたところ応答がなく、意識がもうろうとした状態なので、すぐに作業構台の覆工板の下の日陰場所に身体を移し、現場備え付けの酸素ボンベにより酸素吸入をさせようとしたが、酸素吸入する元気もなく、急いで病院に運んだものの午後3時30分ごろ死亡した。
医師による診断結果では、死亡原因は日射病によるものということであった。
被災者の状況として、体はかなり熱くなっており、首元はかなりの高温度であった。
新聞記事によると、当日の気温は35.3℃を記録し、災害発生現場から少し離れている現場事務所の温度計も35℃を示していた。
また、所轄監督署の災害調査では、午前11時の時点で打設後のコンクリート上の被災者の作業位置に近い場所で、気温39.5℃、湿度50%を記録した。
現場の状況としては直射日光をさえぎるものもなく、かなりの暑さを感じ、発汗もかなりあったとのことであった。
また、同僚作業者によると災害発生当日は快晴で、災害調査時よりも風がなく暑く感じたとのことであった。
被災者は、2次下請の建設会社に所属し、災害発生当日は病気明けで(2週間ほど仕事を休んでいた)、当該現場では新規入場者であった。
被災者の健康状況は、健康診断結果によるとかなりの高血圧であり(1回目205/128、2回目206/130)、胸部X線撮影でも心臓に異常所見が認められ、要精密検査となっていた。
(1) 炎天下作業における日射病等の予防措置をとっていなかったこと。
(2) 休憩時間が少なく、作業管理が適切でなかったこと。
(3) 作業場における新規入場者の作業適否のチェックを行っていなかったこと。
(4) 作業者の高血圧や心臓異常所見を示す、健康診断結果に基づいた、就業場所の変更、作業の転換の措置を講じていなかったこと。
(1) 日射病等の予防措置として、飲料水等補給設備、日陰での休憩設備を設けること。
(2) 作業場が高温または多湿からなる場合は、日中の作業量を減らすなどの作業計画を立てること。
(3) 作業場における新規入場者については作業適否のチェックを行うこと。
(4) 健康診断結果に基づき、作業者の実情を考慮して就業場所の変更、作業の転換等の措置を講じること。
(5) 元請事業者、下請事業者が一体となって上記の措置を講じること。
runより:私もこの作業経験がありますがこういう業種は根性論が横行しています。
強制されたのか真面目だったのか分からないのですが我慢の先にある結果はロクなことにならないという事例です。