職場の危険:酸素4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・製紙工場内の排水溝を流れていた排水から気化した二酸化塩素ガスを吸引した


 この災害は、製紙工場のパルプ製造工程において、原料のパルプ液が原料収納タンク上部から1~3階の床に噴出したため、床を清掃する作業に従事しているときに発生したものである。
 災害が発生した日、被災者が3階に設置されている原料収納タンクから、原料の漏洩を発見し、第3直の同僚とともに清掃作業を行うこととなり、原料収納タンクが設置されている3階の床から始めた。
 3階の清掃を終え、2階の清掃を始めようとしたが、2階は通行に支障がなかったので、通行に支障があった1階の方を先に清掃することにした。
 1階の清掃に入って間もなく、咳、涙、鼻水など体調に異常を感じ近くの休憩室に退避したところ、工場の運転管理員から、二酸化塩素が漏洩しているとの無線連絡があったので、そのまま休憩室に退避していた。
 その後、同僚の作業員は帰宅したが、被災者は呼吸困難を訴えたので、酸素吸入を行って応急措置を施したが回復しないので、労災病院へ収容して医師の診察を受けたところ、二酸化塩素による縦隔気腫と診断され、入院治療を受けた。

 この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1 二酸化塩素水の添加量が漂白工程での消費量より多くなり、未反応の二酸化塩素が脱水工程で脱水された水分とともに脱水タンクに送られ、排水されたこと。
2 脱水タンクのオーバーフロー配管からの排水が流れている排水溝から、気化した二酸化塩素が工場内に拡散したこと。
3 作業員の経験と勘による操作が行われていたため、二酸化塩素の添加量が過多になったものと思われること。
4 グレーチングで蓋がされていた排水溝から気化した二酸化塩素ガスが、工場1階に拡散しやすい状況にあったこと。
5 二酸化塩素ガス漏れ警報が不十分であったため、適切な退避が行われなかったこと。
6二酸化塩素ガスが発生する危険性についての検討が不十分であったこと。


 この災害は、漏洩して床にこぼれ落ちた原料の清掃作業中に、排水溝に流れていた漂白工程で排出された排水から気化した二酸化塩素により中毒に罹ったものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。
1 脱水タンクから排水槽へ至るまでの間を密閉化し、さらに中和処理を行うなどの適切な処理を行ってから排水槽へ貯留する設備に改善する必要があること。
2 ガスの漏洩場所を的確に検知し、速やかに退避できる警報設備を設けること。
3 二酸化塩素が関与するプロセスの作業マニュアルの作成、ガスの漏洩など異常時における措置および退避などのマニュアルを作成すること。
4 二酸化塩素に暴露される作業に従事する作業員に対しては、送気マスクまたは空気呼吸器などの適切な保護具を着用させること。
5 原材料の有害性に関するアセスメントの実施など組織的に対策が行われる体制を構築すること。
6 二酸化塩素の有害性およびその対策の必要性などについて、構内下請の作業員を含めて教育を実施すること。なお、現物を用いて保護具の正しい使用方法を教育する必要がある。

runより:一時的に酸欠を起こしたと思われますが化学物質にいつ暴露するか分からないという事例と言えます。