3、食品の放射能汚染の状況
食品の放射能の汚染状況を見てみましょう。
食品は体内に入りますから、内部被曝が起こります。
内部被曝の影響は、量が少なくても毎日被曝し続けることになる、という点を考えなければなりません。
魚介類は取れた場所ではなく、水揚げされた漁港が産地となります。
たとえば、マグロは三陸沖を回遊し、九州で水揚げされることも多いので、産地からは汚染されているかどうかが簡単にはわかりません。
また、検査体制が整っているといっても、すべての魚を検査できるわけではないですし、魚介類は新鮮さが重要なので、検査結果がわかった時にはもう消費者の手に渡っているということもあります。
少し前のデータになりますが、魚介類について、魚種ごとに汚染の最高値の一覧をつくり、週刊金曜日に公表しましたので参考にしてください。
牛肉については、放射能汚染された稲わらを餌にしていた肉牛が汚染されていたことが判明しました。
仮に、3000ベクレル/kgの牛肉200gを毎日食べると1年間で2.8ミリシーベルトになります。
秋田県で栃木県産の腐葉土から高濃度のセシウムが検出され、2011年8月1日付で、肥料、飼料に基準値が設定されました。
Tウオッチによる放射能汚染測定結果でも現在は、セシウム134、137による汚染が問題で、降下物によるお茶を含む葉物野菜の汚染が確実であること、根菜類の汚染は比較的低いということです。
陰膳方式の測定の必要もありますが、現在、公表されている陰膳方式の測定結果は低めになっているように感じます。
かなり広範囲に放射能が飛散して沈着し、土壌が汚染されているので、東日本では有機農業ができなくなるという危機的な状況となっています。
食べ物の放射能汚染は長期にわたるので、放射能汚染と付き合う時代が到来したと認識すべきでしょう。
それなのに、文部科学省は、自然の放射能は大丈夫だと宣伝をしています。
日本では、福島第一原発の事故前までは年間1ミリシーベルトを基準としていたのに、事故後は世界の平均は年間2.4ミリシーベルトであることを強調するようになり、情報操作をしようとしているので注意が必要です。
4、市民による放射能測定活動と今後の課題
食品の放射能汚染を正確に測定することは簡単ではありません。
たとえば、学校給食における食品検査は、検査の頻度も調査方法も陰膳方式か調理の前後に行うのかなど、自治体毎にばらばらで統一されておらず、検査体制が十分に確立しているとは言えないので検査結果はあまり信用できません。
厳しい独自基準を設定している自治体も限られています。
東日本を中心に、約80カ所の市民測定器があります。
主に、簡易型のNaIシンチレーターによる自動測定器がおおいのですが、正確に測るためのノウハウ、知識が十分ではありません。
校正線源(セシウム134、137)の入手が難しいので、ゲルマによる値付けをした準校正線源(お茶)を共有化するなど、技術的な向上を図るという面と、運動を広げるという面の両方において、市民測定活動のネットワーク化が必要となっていると思います。
5、さいごに
セシウム134とセシウム137の放出割合は1:1です。
セシウム134の半減期は2年ですが、セシウム137の半減期は30年ですので、10分の1になるまでに100年かかります。
汚染を避けて暮らすことを意識付けることが必要です。食品の汚染レベルを詳細に測定し、食品と土壌汚染の情報公開を進め、土壌の除染作業を進めていくことが求められます。
(本稿は、2012年3月31日の講演を広報委員会で構成したものです。)