・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
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・NEWS LETTER Vol.74
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市民による食品測定活動から見えてきたもの
理事・T ウオッチ代表 中地 重晴
3月31日、国民会議の理事であり、有害化学物質削減ネットワーク(Tウオッチ)の代表でもある中地重晴さんを講師として迎え、市民による食品の放射能汚染測定活動から見えてきたことをお話いただきました。
1、東日本大震災と環境問題
私は、東日本大震災による環境問題について3つの問題意識を持っていました。
①有害化学物質の流出と、②解体工事によるアスベストの飛散、③福島第一原発事故による放射能汚染です。
そこで、Tウオッチでは、約3年間で被災地の有害化学物質汚染と放射能汚染の実態調査をし、復興に向けた提言を行うというプロジェクトを三井物産環境基金の助成を得て、開始しました。
まず、①有害物質の流出についてですが、津波で海岸地帯の工場の被害が大きかったため、工場で保管していた有害化学物質が流出したと考えられます。
環境省の報告によると、高濃度のPCBを含むトランス1台、コンデンサ48台が流されてしまったことが明らかになりました 。
一時は、毒劇法に基づくアンケート調査で、六フッ化フランが流出したのではないかという懸念もありましたが、実は被災地に保管されているという届出がされていただけで、実際には青森県の六ヶ所村に保管されていたので流出していないことがわかったということがありました。
Tウオッチでは、被災地で有害物質の汚染を測定し、鉛やほう素で汚染されているところを特定しましたが、恐れていたほど汚染は拡散していないことがわかりました。
ただ、海からやってきたヘドロのダイオキシン類濃度が一桁高い数値がでたところもあり、部分的には汚染されているところも多いです。
アメリカでは、ハリケーン・カトリーナ発生後に有害化学物質情報を活用しており、日本でもPRTR情報を利用し、汚染状況を監視していきたいと思っています。
もっとも、多くの中小の事業者は事業を再開できておらず、また報告されているデータの正確性にも疑問はあります。
②のアスベストについては、古い建物が少なかったため、吹き付けアスベストの飛散はそれほどひどい状況ではなさそうでした。
2 、Tウオッチによる食品の放射能汚染測定活動
私は、1986年のチェルノブイリ原発事故後、「たべものの放射能をはかる会」(1989~2000)の活動として、ベラルーシで食品測定器の支援と、輸入食品の放射能汚染測定を行ってきた経験がありました。
そこで、③福島第一原発による放射能汚染についても、Tウオッチで食品の放射能汚染をはかることにしました。
以前、使用していたNalシンチレーションカウンタの部品が寿命で使えなくなっていたため、新しい部品を購入し、2011年5月20日から稼動させました。2012年3月21日までの10カ月間に約680件の測定(市民の依頼による測定と、自主測定を含む)を行い、埼玉と静岡のお茶から暫定基準値を超える汚染が確認されました。
自主測定では、汚染の実態を把握し汚染地域の農業をいかに守るかという観点から、福島県だけではなく、栃木県那須塩原市のアジア学院や埼玉県小川町など有機農業で有名な場所での測定を行っています。