http://sonpo.or.jp/archive/publish/bousai/jiho/pdf/no_222/yj22214.pdf
2005予防時報222
化学物質過敏症
柳沢幸雄*やなぎさわゆきお/東京大学大学院新領域創成科学
研究科教授
過敏症患者の苦しみ
「シックハウス症候群」、「化学物質過敏症」という言葉は、大多数の読者が知っているであろうが、シックハウス症候群と化学物質過敏症の違いや過敏症患者の症状の実態などについて、正しい知識を持っている人は少ないのではないかと思われる。
そこでまず、過敏症患者の中学生の手記を紹介したい。
中学生の手記
~化学物質過敏症になった僕の苦しみ~
僕が小学校5年の3月に問題の家に引っ越しました。
3人兄弟で、3階に一つずつ部屋をもらって喜んでいました。
しかし、引っ越して自分の部屋で寝たら、頭痛、吐き気、めまいなどの症状が出ました。
僕自身も、最初は引越しの疲れのせいだと思っていました。
しかし、何日経っても症状は治まらず、日に日にひどくなって行きました。
1週間くらい経ってから、鼻血が1日何十回と出るようになったのです。
耳鼻科に行ったら鼻をいじったからだと言われました。
それで、僕にはどうすることもできませんでした。
ずっと体の調子が悪いまま3ヶ月を過ごしました。
7月上旬のある日、家族で買い物に行き、2時間くらいして家に帰ると、飼っていたハムスター12匹が泡を吹いて死んでいました。
兄弟3人で可愛がっていたハムスターが全部死んだ時は、悲しみを通り越して怒りに変わりました。
これはこの家に何かあると思い、恐ろしくなって、おじいちゃんの家に避難しました。
夏休みの間、おじいちゃんの家で過ごしていたら大分良くなりましたが、9月の新学期から通学のため、もとの家に戻りました。
そして、9月、10月、11月、12月とそこに住んで、結局もうそこに住めないということになり、おじいちゃんの家に住むようになりました。
つまり、ハムスターの致死量のホルムアルデヒドを半年以上すっていたことになります。
中学になって、通勤電車の中で、乗客の整髪料や化粧品、衣服についた防虫剤などのいろいろな化学物質を吸ってしまうと、苦しくなり、ホームではタバコの煙で皮膚がまっかにはれあがり、学校に行くまで何回も途中の駅で休んで通っていました。
あまり我慢してその場所にいると、一瞬、意識がなくなってしまうこともたびたびありました。
学校にいても塗料やワックスのにおい、教室にいてもクラスメートの整髪料や香水のにおいで気分不良になりました。
もともとのきっかけはホルムアルデヒドですが、この病気は徐々にいろんな物質に反応するようになるのです。
その結果、整髪料や塗料、ワックスといったものにも反応するようになり、校内においても入れる教室や、受けられる授業が限られてきます。
中学2年の時からアトピーが悪化し、クラスメートから「うつる」「きたない」「気持ち悪い」「お前帰れ」などと言われ、病気のことを説明しているにも関わらず、先生からは「けったいな病気やな」と言われました。
「お前は、一生、化学物質から逃げて、クリーンルームで生きるんか。
できんやろ。ちょっとくらい我慢しろ。」と暴言を吐かれました。
周囲の病気に対する無知と無理解、偏見で学校にも行けなくなってしまいました。
僕は好んでこんな病気になったのではありません。
わがままを言っているわけでもないのです。
我慢や努力で直せるなら、もとの体に戻りたいし、戻して欲しいとメーカーと国に訴えたいと思います。
runより:我慢しろ!そのうち慣れる・・・私も何度も言われて苦しみながら働いてました。
未だに化学物質過敏症の知名度の低さには悔しさしか出てきません。