日弁連:電磁波問題に関する意見書10 | 化学物質過敏症 runのブログ

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5 実態調査の必要性(「第1 意見の趣旨」2)
電磁波の健康影響に関する研究は,まだ途中段階にあり,日本を含め,諸外国が今後も研究が必要であるとしているところである。
そこで,公害を防止し,環境を保全する弁護士会の立場から,今後,立法・行政・司法の場面で利害関係者が議論していくために必要とされる科学技術的知見を確立するために必要な実態調査について,以下のとおり意見を述べる。

(1) 基礎研究の充実と実態調査の実施
電磁波の健康影響に関する研究がいまだに不十分であるのに加え,我が国の実情に応じて,我が国独自の疫学的調査を実施する必要がある。
この点,我が国では細胞レベル,動物実験レベルの調査報告はあるが,疫学的調査については,兜報告以来,一般に知られているものはほとんどない。

しかし,人体実験が許されない以上,ヒトに関する曝露原因と仮定される問題との関連性の研究には実態調査が最も適切である。

① そこで,実態調査,特に,訴えの多い携帯電話端末,高圧送電線,携帯電話中継基地局周辺に居住する住民の健康被害の症例報告などから,関連性が疑われている様々な愁訴(頭痛・鼻血・吐き気・白血病・脳腫瘍・聴神経腫瘍等々)との相関性を研究すべきである。
特に,携帯電話については,使用頻度との相関性が指摘されているので,
携帯電話の使用頻度と健康被害との相関性に関する調査を実施すべきである。

② 職業曝露に関する研究
新たな技術開発を行いそれによって利潤をあげる企業に対し,企業の社会
的責任(CSR)の観点から,企業独自の職業曝露の問題を調査し,これを公開すべきである。
企業においては,労働衛生のために健康診断に関するデータが集積されていることが推察される。

これと電磁波源からの被曝強度に関するデータを加え,個人情報保護に配慮しつつ,疫学研究者などを中心とする外部専門家に学術的なデータとして提供し,職業曝露の場面において相関性を研究するべきである。

③ 使用されている商業電磁波の性質に関する情報開示
現在,企業が開発し,利用している電磁波の性状に関するデータは,企業
秘密保護の観点から,ほとんど明らかにされていない。

そこで,基礎研究の
前提として,電磁波の性状に関し,物理学の研究者に対し,電磁波の性状に関するデータを提供することで,疫学研究者との学際的な研究に資するべきである。


(2) 科学研究における独立性・公平性の確保
科学研究においては,研究者やその所属する研究機関などが,当該科学技術に関して利益を得ている企業やその関係団体から研究資金の援助や寄付などの利益供与を受けている場合,研究結果にバイアスがかかる可能性がある。
この点に関して,研究者や研究機関が,関係団体からの利益供与の有無や程度を公開することが世界的な潮流となっているにも関わらず,電磁波に関する研究に関し,利益供与に関する情報公開を定めた規範はない。
電磁波に関する公的研究実施に当たっては,関連企業からの利益供与の排除に極力努めるとともに,関連企業からの利益供与を有する研究者ないし研究機関が研究に関与する場合には,関連企業からの利益供与の程度について,明らかにするべきである。