日弁連:電磁波問題に関する意見書1 | 化学物質過敏症 runのブログ

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電磁波問題に関する意見書
2012年(平成24年)9月13日
日本弁護士連合会
現在,電磁波による健康被害を懸念する声が多く聞かれ,当連合会にも市民団体等から電磁波の法規制に関する取組を要望されているところである。
また,現在多くの国が準拠する国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)1によるガイドライン(以下,「ICNIRPガイドライン」という。)2よりも低い強度の電磁波と小児白血病,がんなどの因果関係を示唆する研究も,日本の国立環境研究所首席研究官であった兜真徳氏らによる研究など,多数存在しているところであり,それらの研究結果を受け,様々な国際的機関が,電磁波の健康被害に対して警鐘を発している。


2008年9月には,欧州議会が,電磁波に関する現在の基準が妊婦や新生児,子どもといった脆弱なグループには不十分であることを批判する決議を出し,2011年5月には,欧州評議会議員会議が,特に若者や子どもに大きなリスクがあることから電磁波に関する予防原則の適用を求める決議を採択している。
また,同じく2011年5月には,国際がん研究機関(IARC)3が,高周波電磁波を「グループ2B」(発がん性があるかもしれない)に分類したことは記憶に新しいところである。
もっとも,現在までのところ,ICNIRPガイドラインよりも低い強度の電磁波
で健康被害について,科学的因果関係が証明されているとまではいえない状況である。
しかし,電磁波による健康被害として懸念される疾患には,上記のとおり小児白血病,がん等,生命の危険も含まれており,厳密な科学的知見の確立を待っては取り返しのつかない大きな被害を発生させてしまう危険性もある。

また,そのような重大な問題に関し,規制を所管するのが総務省,経済産業省といった電力や電波を利用する側の企業を所管する省庁であることも,健康被害を防止することが軽視される可能性があり問題であると考える。そこで,当連合会としては,予防原則の観点に立ち,たとえ科学的な知見が確立していないとしても,将来の健康被害の発生,特に影響を受けやすいと思われる子ども
たちや病人の健康被害の発生を防止するため,以下のことを求める次第である。

また,将来の健康被害の発生防止という観点とは別に,現在,電磁波過敏症として,実際に電磁波による被害で苦しんでいる方々も存在していることを踏まえ,人権保障の観点から,電磁波過敏症の方々への一定の対策もあわせて求める。
1 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP:International Commission on Non-Ionizing Radiation
Protection)
2 「時間変化する電界,磁界及び電磁界による曝露を制限するためのガイドライン(300GHzまで)」1998年4月制定,2009年一部改訂
3 国際がん研究機関(IARC:The International Agency for Research on Cancer)

第1 意見の趣旨
1 新たな安全対策の創設
国は,電磁波の安全対策の在り方について調査,研究し,人の健康及び環境を保護するために,「電磁波安全委員会(仮称)」を新たに設置し,以下の内容を含む立法及び組織作りを行うべきである。
(1) 組織の内容
「電磁波安全委員会(仮称)」は,中立,公平な立場から電磁波に対する安全対策を行うために,業界を所管する省庁から独立した組織とし,その構成員は,関連企業からの利益供与の有無及び内容を明らかにした上で,電磁波の健康影響に関して見解を異にする様々な立場から選任すべきである。
(2) 暫定的規制の実施
電磁波に関する安全対策のために,予防原則に基づいて,幼稚園,保育園,小学校,病院等が存在する地域をセンシティブエリアと指定し,他の地域より厳しい基準を設けることを検討するべきである。
(3) 電磁波放出施設に関する手続規制と情報開示
① 携帯電話中継基地局等の電磁波放出施設を新設する場合,当該基地局周辺の住民に対する説明を行った上,新設することの是非について住民との協議を行う制度の実現を図るべきである。
② 住民が携帯電話中継基地局等の電磁波放出施設の場所を知ることができるための情報公開の制度を設けるべきである。

2 実態調査
(1) 国は,電磁波の健康被害に関する研究がいまだに不十分であることを踏まえ,関連企業からの利益供与の有無及び内容が公開された研究者により,公正に構成された調査・研究機関を設置し,以下の調査及び分析を行うべきである。
① 高圧電線の近くに居住する住民や,携帯電話中継基地局周辺に居住する住民の健康被害についての実態調査の実施。
② 携帯電話の使用頻度と健康被害との実態調査の実施。
③ 電力会社や携帯電話事業会社等,強い電磁波の曝露を受けている企業に勤務する労働者について,職業曝露4と健康被害についての実態調査の実施。
(2) 以上の実態調査の結果で新たな科学的知見が得られた場合には,国は,電磁波の規制値を見直すべきである。

3 電磁波過敏症対策
国は,電磁波過敏症の方々がいることを踏まえ,人権保障の観点から,公共の施設及び公共交通機関には電磁波のオフエリアを作る等の対策を検討するべきで
ある。