EUにおけるネオニコチノイド系農薬規制とイギリスの現状 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・EUにおけるネオニコチノイド系農薬規制とイギリスの現状
マット・シャルドロウ氏
(「バグライフ」代表)
「 バグライフ」は、無脊椎動物種の絶滅を阻止し、無脊椎動物の個体数を維持するという目的で、2004年にイギリスで設立された団体です。

バグライフは2009年、ネオニコチノイド系殺虫剤がハチやその他の無脊椎動物に与える悪影響についてレポートを出し、政府に対してネオニコチノイド系殺虫剤の使用を中止するようはたらきかけを行っています。

このバグライフの代表を務めるマット・シャルドロウさんをお招きし、イギリスやEUにおけるネオニコチノイドに関する科学と政策の現状をおうかがいしました。

授粉の重要性
 昆虫による授粉活動は、私たちの食卓を支えるものです。

私たちの食卓にのぼる料理は、3口食べた内の1口分が昆虫の授粉によってもたらされたものです。

世界中の食用植物の90%が、昆虫の授粉によって実っているものだと言われています。

EU域内の作物種の84%、野草の80%は昆虫の授粉に依存しており、野草の62%は花粉媒介によってのみ繁殖しているとの報告もあります。

これは、世界における年間の農業収入の15兆9720億円(1320億ポンド)にものぼるものです(「生態系と生物多様性の経済学 TEEB)」報告より)。
 授粉は、非常に複雑なメカニズムによって成り立っています。例えば、トマトの花には特定のマルハナバチしか媒介者になれません。

授粉は様々な昆虫によって行われており、養蜂で使われるミツバチによる授粉は全体の数%です。

マルハナバチなどの野生のハチが全体の70%程度を占めていると考えられています。

昆虫の危機
 しかし、無脊椎動物の数は近年激減しています。

かつては、車に乗っていればフロントガラスに虫がたくさんついたと思いますが、今ではそのようなことは少なくなりました。
 2004年の報告によれば、過去40年以上にわたって調査をしたところ、現在、蝶の個体数は71%も減少したとのことです。

10年前の蝶の個体数と比較しても33%減少しています。

蛾の個体数は、イギリス国内では大型蛾の66%が減少、蛾のうちの75種は70%以上減少していると報告されています。

マルハナバチはイギリス国内において、過去50年間で60種が80%以上減少しました。ハナアブも66%の種が減少傾向にあると言われています。

EU域内でもハチやハナアブは38%が減少傾向にあります。

これに加えて、虫によって受粉する植物は、風や水を媒介として受粉する植物よりも早い速度で減少しています。
 何故このようなことになってしまったのでしょうか。

ひとつの原因は、農業のあり方が大きく変わってしまったということがあります。

1950年代、特に1970年代以降、農業生産を増強させるため、殺虫剤や化学肥料が大量に使用されるようになりました。

また、森林や草地が農地に変えられ、農業機械が使用されるようになり、無脊椎動物の生息地が破壊され、残された生息地も断絶されました。

イギリス国内においては第二次大戦以降、花の多い草地300万ヘタールが失われ、現在残っているのは10万ヘクタールのみです。

農業環境整備計画で6500ヘクタールの「昆虫生息地」を指定し、農地に自然管理と無脊椎動物の生息地を確保するための空間をつくるなどの活動はしていますが、再生された生息地は0.3%に過ぎません。
 生息地の減少に加えて、殺虫剤の影響も深刻です。現在、EUの殺虫剤の承認試験では、無脊椎動物を含む非標的種へのリスクを最低限に抑えるということにはなっています。

しかし、無脊椎動物を本当に守るためには、自発的な取り組みや意識向上というだけでは不十分です。

最近、EUで「農薬の持続可能な利用に関する指令」が成立しましたが、この指令も不十分なもので、少なくとも総合的な殺虫剤管理の制度が必要です。