・何が分かったか?
生涯を通じて低レベル難燃剤に曝露した魚は正常に生きた。
魚はその組織中に異なる種類の難燃剤を蓄積したが、明確な毒性影響の兆候は示さなかった。
しかし、最も高い用量で処理されたメスの中にT4 のレベル上昇が観察された。
子孫にはもっと複雑な異なる展開があった。
難燃剤は卵の中に現れ、この化学物質は曝露した成魚から受け継がれることを示した。
予想されたように、曝露レベルが高ければ高いほど卵の中の難燃剤の濃度は高かった。
甲状腺内分泌かく乱のマーカーである T3 と T4 のレベル上昇は、その親が3及び10μg/Lの難燃剤混合物に曝露した卵及び孵化した魚中でも見られた。
また、二つの高曝露レベルでは、孵化する魚の数が少なく、非曝露の魚の子孫より体重が軽かった。
子孫のうち稚魚と胚芽もまた難燃剤に曝露されると感受性が高まる。
研究者等は、清浄な水で育った稚魚に比べて、3 又は 10 μg/Lのレベルで難燃剤に曝露した子孫の中に物理的な先天性欠損を観察した。
それ等はまた、孵化率及び体重に関しても難燃剤の影響を受けやすかった。
研究者らは、1 μg/Lの難燃剤混合剤に曝露した魚の中に孵化率の減少と体重の低下という有害影響を初めて観察した。最も高い難燃剤混合物に曝露した日齢10日の魚の中にもっと高いレベルのT4が測定された。
最初の親の曝露は子孫における遺伝子発現を変更した。影響を受けた遺伝子は甲状腺の発達と甲状腺ホルモン合成と輸送に関係するものであった。
何を意味するか?
曝露した親から子孫に直接伝えられた難燃剤は、子孫の初期の発達をゆがめ、甲状腺ホルモンのレベルを増大することができることがこのメダカの研究でわかった。
そして、次世代が同じ汚染物質に暴露すると、その影響はますます悪化する。
この研究で使用された長期的な低レベル曝露は、野生の魚が受けるであろう実際の環境中のレベルの濃度なので、多世代健康リスクを評価するのによい方法である。
この結果は、曝露した親だけでなく次世代にも難燃剤が甲状腺ホルモンかく乱を引き起こすことを示しているので重要である。
卵が孵化し稚魚が発達するときに、親が曝露しなかった魚より成長が遅く、体重は低かった。
これらの成長変化は、PBDEs によって引き起こされた甲状腺ホルモンかく乱に関係していた。
孵化後、汚染された水に棲んでいた稚魚は発達がより強く阻害された。
この研究は、成長中の子孫はその親よりも PBDE により影響を受けやすくなることを示唆している点で独自性がある。
この結果は、親と同じ環境にすむ野生の魚は、世代の経過と共に毒性が拡大するかもしれないということを暗示している。
正確には、どのように難燃剤が第二世代の甲状腺ホルモン系に影響を及ぼすのかについてはよく理解されていない。
少なくとも、二つの点が重要であるように見える。
すなわち、親、特に母親は正常なレベルよりもっと高いレベルで甲状腺ホルモンを直接的に卵に堆積させることができる。
そして/又は、親から受け継いだ難燃剤は、発達中の魚のホルモンのレベルに影響を及ぼすかもしれない。