筏(1998)による〔『環境ホルモン』9 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・●環境ホルモンへの欧米政府と業界の対応
 環境ホルモンが生殖や発育に有害だという報告に対する政府や工業界の反応も、キャドバリーはくわしく拾いあげている。
 英国やドイツなどのヨーロッパ政府は、すでに環境毒物学および化学物質の毒物学に関する欧州センターを通じて、全ヨーロッパ規模の研究を開始している。

米国でも、環境保護局が環境ホルモン問題を最優先調査事項の一つに位置づけた。

米国科学アカデミーも、ホルモン作用のデータを評価するための専門家委員会を招集した。
 一方、つぎのような話も紹介されている。1993年に米国の連邦議会がコルボーンらの第一線研究者から話を聞くために説明会を開いたところ、そこへの議員の出席はまばらで、話を熱心に聞くでなく、一つの質問もでなかったそうである。
 工業界の対応に関しては、たとえば、欧州化学工業委員会が、「製品の安全性にかかわるあらゆる問題について、消費者と同じく深い関心を持ち、その重要性を認識している。

各企業は当委員会を通じてヨーロッパやアメリカの科学界や取り締まり当局と連携している。

われわれの目的は、化学物質が人間や野生生物のホルモン作用に影響を及ぼし、生殖能力を阻害しているかどうかを見きわめることである」と表明した。
 米国でも、化学製造者協会をはじめとする業者団体が、DDTと乳ガンとの関連など、数多くの調査研究に資金を提供している。

精液の質の変化を評価するための専門家委員会も招集され、「委員会のメンバーである専門家による、精液の質に関する既存の研究の誤りを発見し、それを正す」研究も進められているそうでる。


●環境ホルモン問題に関する研究者の考え
 環境ホルモン問題にとりくんでいる研究者はこの問題をどのように考えているのだろうか。

『メス化する自然』の中でよく名前のでてくるのは、英国のシャープ博士とサンプター教授である。参考までにこの二人の話を紹介しよう。
 「化学物質がそんなに体に悪いなら、禁止してしまえばいいじゃないか、それで問題解決だ、というのが大方の人々の反応だろう。

そんなに簡単な話なら、どんなにいいだろう。

だが、俎上に載せられている化学物質は、日常生活とは切り離せない多くの製品に使用されているため、それらを一切合切取り除くとなると、それはまさに革命を起こすに等しい」(シャープ博士)

 「たとえば、フタル酸化合物を使用禁止にするとしましょう。

家財道具はまず半分はなくなります。

家具類、ポリ塩化ビニルのプラスチック、たとえば皿洗い機や冷蔵庫、冷凍庫などはどれも、大量のプラスチックを使っています。

化粧品の大部分、食品容器やラップにも、フタル酸化合物が使われています。

そういうことを、本当にやろうと思いますか?」(サンプター教授)
 

「プラスチック容器からフタル酸化合物が溶け出る恐れがあるから、プラスチック容器入りの牛乳をやめて、ガラスびん入りの牛乳にしたとしても、今度はびんを洗うのに使われる洗浄剤にエストロゲン様化学物質が含まれているかもしれません。

同じように、ビスフェノールAが溶け出る可能性から、缶詰野菜ではなく生野菜を食べるとしても、それにはエストロゲン様作用を持つ農薬や除草剤が含まれているかもしれません。

エストロゲン様作用のある化学物質はじつに多種多様で、さまざまな用途に使われているため、暴露量を減らすためのアドバイスをしろといわれても、現在のところ、絶対に不可能とはいえないまでも、きわめて困難なのです」(サンプター教授。いずれも『メス化する自然』より)