筏(1998)による〔『環境ホルモン』5 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・●PCBとダイオキシン以外の化学物質
 PCBとダイオキシンに関してコルボーンらは多くのページをさいているが、その他の化学物質に関する記述は意外に少ない。その中でも比較的くわしく説明しているのは、ジエチルスチルベストロール(DES)という合成ホルモン剤である。これは流産防止に約500万人の女性が服用し、さらに「事後に飲む経口避妊薬」としても利用された。その最盛期には妊婦必携の妙薬として絶賛された。
 ところが、その後の研究により、生まれてきた女の子にも男の子にも生殖器の奇形が認められた。また、膣ガンや子宮ガンを誘発することもわかった。おどろいたことに、別の調査によると、DESは、避妊は別として、流産予防に何の効力もないどころか、流産、早産、新生児死亡などに拍車をかけていたそうである。
 クローバーなどの植物がもつホルモンについても紹介されている。この天然物質は、それを食べた動物に対して避妊薬としてはたらき、その動物に子孫を残さないようにしてしまう。
 これら以外にとり上げられている合成化学物質は、ビスフェノールAとp-ノニルフェノールという一般にはなじみのなかった物質である。
 ビスフェノールAは、スタンフォード大学でポリカーボネート製のフラスコを用いてイースト菌を培養しているときに偶然見つかった。

フラスコから溶出したビスフェノールAがイースト菌の異常増殖をひき起こしたのである。
 このイースト菌の増殖に影響するビスフェノールAの濃度は2~5ppb、つまり、5億分の1~2億分の1であったが、当時、ポリカーボネートを合成していたジェネラル・エレクトリック(GE)社は、その溶出液中のビスフェノールAの濃度を10ppb(1億分の1)までしか測定できなかった。
 ビスフェノールAがイースト菌を異常に増殖させたのは、それがホルモン作用(エストロゲン様作用)をもっていたからであるが、その効力は天然エストロゲンの2000分の1であった。

缶詰の内側のプラスチック・コーティングからビスフェノールAが検出されたという研究も紹介されている。
 今後、本書でごく低い濃度をあらわす略号がでてくるので、それを図1-3にまとめて示しておく。

ppbとpptは、10億分の1と1兆分の1の濃度であるが、通常の濃度にでてくるグラムやリットルのような質量や体積の単位がふくまれていない。

これは「グラム/グラム」という具合にグラムがうち消されてしまっているからである。

あまりにも少ない量であるため、それが質量とか体積であるということが重要ではなくなるのである。

図1-3 数字の大きさをあらわす略号と極低濃度を示す単位

t (トリリオン)1兆
b (ビリオン)10億
m (ミリオン)100万
k (キロ) 1000

m (ミリ)1000分の1(10-3)
μ (マイクロ)100万分の1(10-6)
n (ナノ)10億分の1(10-9)
p (ピコ)1兆分の1(10-12)
f (フェムト) 1000兆分の1(10-15)

ppm (parts per million)100万分の1の濃度
ppb (parts per billion)10億分の1の濃度
ppt (parts per trillion) 1兆分の1の濃度