・Q.2:電磁界の種類にはどのようなものがあるのですか?
A.2:電磁界には、周波数が低い(波長が長い)方から順に、「静電磁界」、「超低周波電磁界」、「中間周波電磁界」、「高周波電磁界」があります。
【解説】
電磁界には色々な種類があり、その性質は「周波数」と「波長」で決まります。
「周波数」とは、電磁界の強さが1 秒間に何回変化を繰り返すかを表すもので、「ヘルツ(Hz)」という単位が用いられます。
「波長」とは、電磁界の波の間隔を表すもので、「メートル(m)」が用いられます。
周波数と波長の積は電磁界が空間を伝わる速度を表し、この値は光の速度と同じく、毎秒30 万km で一定です。
電磁界の周波数が低いほど波長は長く、周波数が高いほど波長は短くなります。
電磁界には、周波数が低い(波長が長い)方から順に、静電磁界、超低周波電磁界、中間周波電磁界、高周波電磁界があります2。
○ 静電磁界
「静電磁界」は、鉄道や医療用磁気共鳴画像撮影装置(MRI)などに用いられる、周波数が0Hz、つまり強さが変化しない電磁界を指します。
地磁気や永久磁石の磁界もこれに含まれます。静電磁界は「直流電磁界」と呼ばれることもあります。
○ 超低周波電磁界
「超低周波電磁界」は、家電製品や、送電線・変電所などの電力設備に用いられる50Hz 及び60Hzを含む、周波数が1Hz~300Hz の電磁界を指します。
「ELF 電磁界」や「商用周波電磁界」と呼ばれることもあります。
○ 中間周波電磁界
2 世界保健機関(WHO)「国際電磁界プロジェクト」(International EMF Project)のウェブサイト「電磁界とは?」("What are electromagnetic fields?")http://www.who.int/peh-emf/about/WhatisEMF/en/
における定義より。
「中間周波電磁界」は、電磁誘導加熱式(IH)調理器や電子タグ、電子商品監視機器(EAS)などに用いられる、周波数が300Hz~10,000,000Hz(10MHz)の電磁界を指します。
「IF 電磁界」と呼ばれることもあります。
○ 高周波電磁界
「高周波電磁界」は、TV・ラジオ放送、携帯電話などの無線通信や、電子レンジなどに用いられる、周波数が10,000,000Hz(10MHz)~300,000,000,000Hz(300GHz)の電磁界を指します。
「無線周波電磁界」や「RF 電磁界」、「電波」3と呼ばれることもあります。
高周波電磁界については、発生源からの距離が遠い領域(遠方界)4と、これよりも近い領域(近傍界)で性質が大きく異なるため、異なる尺度を用いて強度を表しています。
遠方界では、高周波電磁界の強度は「電界強度」、「磁界強度」または「電力密度」5で表され、単位にはそれぞれ1 メートル当たりのボルト(V/m)、1 メートル当たりのアンペア(A/m)及び1 平方メートル当たりのワット(W/m2)または1 平方センチメートル当たりのミリワット(mW/cm2)が用いられます(10 W/m2=1 mW/cm2)。
電界強度、磁界強度及び電力密度は発生源からの距離が大きくなると共に弱まります。
遠方界では、電界強度、磁界強度及び電力密度の間に以下の関係式が成り立つので、これらのうち1 つの値がわかれば、残りの2 つの値も計算できます。
電力密度(W/m2)=[電界強度(V/m)]2÷377=377×[磁界強度(A/m)]2
一方、近傍界では、電界と磁界のパターンが複雑になり、上の関係式が成り立たなくなります。
このため、携帯電話のように、近傍界で身体がばく露される通信機器などから発せられる高周波電磁界の強度は、身体に吸収される熱エネルギーの比率である「比吸収率(SAR)」で表され、単位は1 キログラム当たりのワット(W/kg)が用いられます。
表 1 に、これらの電磁界の周波数、波長及び主な発生源の分類を示します。
また、p.48 に単位一覧を示します。
3 「電波法」では、3,000,000,000,000Hz(3THz)以下の周波数を「電波」と定義しています。
4 一般的に、おおむね発生源からの距離が電磁界の波長を円周率の2 倍で割った値よりも遠い領域が遠方界、これよりも近い領域が近傍界とされています。
5 「電波法」では、「電力束密度」という用語を用いています。
* kHz=1,000Hz(千ヘルツ)、1MHz=1,000,000Hz(百万ヘルツ)、1GHz=1,000,000,000Hz(十億ヘルツ)
注
高周波電磁界よりも周波数が高いものには、赤外線、可視光線、紫外線、放射線(エックス線やガンマ線)があります。
このうち、紫外線の中でも周波数が高いものと放射線には、物質中を通過する際、物質を構成する原子から電子をはじき飛ばしてイオン化する作用(電離作用)があります。
生物がこの電離作用のある放射線や紫外線を過度に浴びると、DNA に生じた傷(損傷)を元通り(正常)に治せなくなり、がんなどの悪影響が生じる恐れがあります。
超低周波、中間周波、高周波など各種の電磁界には、このような電離作用はありません。
なお、本冊子では高周波電磁界よりも周波数の高い上述のようなものについては扱いません。