・出展:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
http://kokumin-kaigi.org/
・体の免疫力と環境を汚染する化学物質の関係とは?(後半)
モリゾーさん(本名:森谷 隆)
2. 免疫と環境を汚染する化学物質の関係は?
第1回の連載では、「化学物質の毒性、副作用、リスクってなんだろう?」ということをお話ししましたが、その中で口から食べた物が、胃腸で消化・吸収され(「吸収」)、血液で体中に運ばれ、エネルギー変換または貯蔵され(「分布」)、不要な物・危険な物は肝臓や腎臓で変換・代謝され(「代謝」)、便・尿・汗として排泄(「排泄」)されることを思い出してください。
特に、環境を汚染する化学物質が体内で「代謝」され無毒化されるのは、主に肝臓で行われます。
また、胃腸で消化・吸収され血液を循環するタンパク質、アミノ酸、脂質、糖質、ビタミンなどが最初に代謝されるのも肝臓であり、肝臓に障害がある場合はタンパク質、脂質、糖質の代謝エネルギー・システムに影響を与え、免疫低下を招くので、栄養と免疫のバランスという観点からも肝臓は重責を担っています。
さらに、肝臓ではリンパ球細胞や樹状細胞などの多くの免疫細胞が活動しており、「自然免疫」と「獲得免疫」からなる「生体防御」の免疫そのものにおいても重要な役割を果たしています。
このように、肝臓が主に担う「代謝」という機能が「生体防御」の免疫へも繋がって、大きな体のシステムとして「恒常性維持」バランスが保たれていると考えれば、免疫と環境を汚染する化学物質の関係も理解しやすくなるかと思います。
3. 免疫を高めれば、話題の放射性物質からの身を守れるのか?
体内の免疫には、体内で癌化した細胞(癌細胞)を監視・攻撃・排除する機能もあります。
特に、NK細胞やキラーT細胞によって癌細胞に対して攻撃が行われますし、体が獲得した抗体が癌細胞に標識として付着し間接的に攻撃を加えていることも知られています。
ですから、適度な運動や飲食、ストレスをためない生活習慣、体温を下げない日々の習慣、薬・抗生物質を乱用しないことなどで、基本となる免疫能力を高く維持すれば、癌を予防し健康維持に寄与するでしょう。
しかし、話題の放射性物質は一般的な環境汚染物質とは違う特性を持っており、一筋縄では行かないのが現実でしょう。
例えば、ウランの核分裂により人工的に生ずるセシウム137は、半減期30.07年の放射性同位体です。
これが体内に入ると血液の流れに乗って腸や肝臓にベータ線とガンマ線を放射し、カリウムと置き換わって筋肉に蓄積したのち、腎臓を経て体外に排出されます。
セシウム137は、体内に取り込まれてから体外に排出されるまでの100~200日にわたってベータ線とガンマ線を放射し体内被曝の原因となります。このベータ線とガンマ線は骨髄へも影響を及ぼしますので、骨髄で生産され免疫の主役を担う白血球細胞は打撃を受け、免疫低下を引き起こします。
また、心臓、肝臓、腎臓をはじめとする生命維持に必要な器官への毒性効果も現れてきて、肝臓においては免疫システムの損傷によりウィルス性肝炎が増大し、肝臓の機能不全と肝硬変や肝癌への進行の原因となったりします。
このように、放射性物質のベータ線とガンマ線は、免疫そのものを低下させ、生命維持に必要な器官や組織にも悪影響を及ぼしますので、自分の健康を維持する・身を守るには、第1回の連載でもお話した「用量(Dose)、曝露量(Exposure)」を低く抑える以外に良い手立てはないだろうと考えます。
さて、第2回、第3回と、体の免疫というお話から、免疫と環境を汚染する化学物質および話題の放射性物質との関係までを読者のみなさま向けにてお伝えした次第です。
科学的な考え方が少しでも普段の生活や判断に活かされることを祈念いたします。次回も、お楽しみに。