・アセチルコリン受容体への短期的影響
両方のピレスロイドは新生児マウス脳のコリン作動系を2様式で影響を与えた。
何らの神経毒症状を起こさない少ない量で、大脳皮質のムスカリン性受容体に影響を与えた。
少量投与
デルタメトリンは高親和性結合部位の割合の増加と、低親和性結合部位の減少を起こしたが、逆のことがバイオアレスリン投与によって見られた。
また、デルタメトリンは大脳皮質でニコチン性受容体密度を増加させた。
多量投与
多量投与ではピレスロイド中毒の典型的な症状、デルタメトリンで舞踏病様アテトーゼ*が、バイオアレスリンでは振戦が現れた。
この症状は投与中に徐々に減少し、4日目には消失した。
この投与量でデルタメトリンは海馬のムスカリン性受容体と大脳皮質のニコチン性受容体に影響を及ぼしたが、バイオアレスリンは明らかな影響を及ぼさなかった。
このことは新生児マウスで急速に発達中のコリン作動性の系は生体外毒物に敏感であることを支持している。(7)
長期的影響
幼い時期にピレスロイドを投与すると、成熟してからもピレスロイドの影響が見られ、行動やアセチルコリン受容体に影響することが知られている。
また、ピレスロイドなどを幼い時期に投与し、似たような神経毒物を投与すると、その影響が強く現れることも報告されている。
アセチルコリン受容体への影響
急速に脳が成長しているマウスにバイオアレスリンやデルタメトリンを投与すると、ムスカリン性のアセチルコリン受容体に影響を及ぼす。
生後10日目から16日目の間、1日1回バイオアレスリン(0.7 mg/kg)またはデルタメトリン(0.7 mg/kg) を投与し、マウスの行動学的検査を生後17日目と4か月で行った。
行動学的検査の1-2週間後殺し、ムスカリン性受容体密度を調べた。(5)
自発的運動の増加
成熟した生後4か月の行動学的検査は、バイオアレスリン及びデルタメトリンを投与したマウスの両方で、自発運動行動の有意な増加を示した。
バイオアレスリンとデルタメトリンを投与した動物でムスカリン性受容体密度のそれぞれ有意な減少と減少傾向が見られた。
この研究は新生児マウスで急速な発達をしている間のコリン作動性の系のかく乱は、大人になったマウスで行動とコリン作動性の系とに永続的変化を導くことを示している。(3,5)
また、この影響は投与量が増えるにつれて強まる(1)。