・健康への関心
職場に VDUs が導入された当初、頭痛、めまい、疲労、白内障、妊娠への有害な影響、皮膚発疹といった多くの健康上の訴えの原因としてVDUs に疑いがもたれました。
電磁界が何らかの健康影響をもたらすか否かを明らかにするために多くの科学研究が行われました。WHO や他の研究組織は、室内空気質、職務関連ストレス、VDU 使用時の姿勢や腰掛け方といった人間工学的問題などを含めた様々な要因をレビューしました。
それらの研究から(以下を参照)、VDU作業に関連した健康影響の決定因子は、VDUs からの電磁界放射ではなく、作業環境である可能性が示されました。科学的知見の概要は以下の通りです。
妊娠への有害な影響
オーストラリア、欧州、北米において、妊娠への有害な影響が見られたいくつかのクラスタ(集積)が注目され、VDU 作業が妊娠に影響を与えるかも知れないとの指摘が1970 年代末に出されました。
これらのクラスタは、VDUs 作業を行い、かつ異常に高い発生率で流産または奇形児出産を経験した妊婦群でした。
これにより、北米と欧州で多くの疫学研究と動物実験が行われることになりました。
全体として、これらの研究がVDUs からの電磁界による生殖過程への影響を明らかに示すことはありませんでした。
しかし、もし生殖に影響があるとしたら、それは職務ストレスなどその他の作業要因に関連するかも知れないと、これらの研究は示唆しました。
眼への影響
白内障や他の眼の疾病とVDU 作業との間に関連は全く見出されませんでした。
VDU 画面からのグレア(まぶしい光)および反射が、極端な状況において眼の緊張や頭痛の原因になることが確認されています。
皮膚への影響
発疹やかゆみといった皮膚症状の増加については、特にスカンジナビア諸国で研究されてきました。
しかしながら、これらの症状はVDUs からの電磁界放射と関連しませんでした。
こうした症状を持つ人を対象に行われた実験室検査で、その人達の症状は電磁界ばく露の結果生じたものではないことが示されました。
ほかの因子研究者は室内作業環境に関連する種々の要因を調べました。これには、室内空気質、室温、不適切な照明による眼の疲労、人間工学的に不適切な作業場所などが含まれます。
人によっては頭痛やめまい、筋・骨格系の不快感を経験しました。
VDUs 作業に適切な作業環境と人間工学的対策が導入されれば、これらの症状の多くは予防可能です。
正しい姿勢を取らせ、筋肉や眼の緊張、ストレスとなるその他の緊張を減じるようにするために、設備、照明、その他の環境面を設計することはその対策の一つです。
以上の結論は国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)、国際労働機関(ILO)およびWHO が行ったレビューとー致しています。
防護手段VDUs から放射される電磁界による健康への有害な影響への不安は、それらに対する防護手段になると思わせた製品を普及させることになりました。
VDUs 使用時に用いる特製エプロン、画面遮蔽材、“電磁放射吸収“装置などがあります。
いずれにしても、これらのものはVDU からの放射に対して何ら防護効果を持ちません。
元来、VDU からの電磁界放射は各国の基準や国際基準で許容されているばく露制限値よりもはるかに低い値にすぎないため、たとえこれらのものが放射を低減させることができたとしても、実際的な価値はありません。
眼の緊張の原因となるグレアを低減させるスクリーンを除き、防護用品の使用をWHO は推奨していません。
国際労働機構(ILO)も同様に電磁界放射の低減を目的とした防護用品の使用を推奨していません。