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サイトカイン
サイトカインとは、細胞を意味する「サイト」と、作動因子を意味するの「カイン」が組み合わさった用語。当初は免疫系の制御や炎症の誘発、抗腫瘍性作用等が注目されていたが、細胞増殖や分化など生体の恒常性維持に重要な物質であることが判明。インターロイキや腫瘍壊死因子、線維芽細胞増殖因子、インスリン様成長因子など多くの種類がある。
細胞浸潤 cell infiltration (炎症性細胞浸潤)
組織内に白血球が出ている状態を言い、炎症の重要な組織学的所見である。
シガテラ毒 ciguatoxin
熱帯から亜熱帯のサンゴ礁にすむ魚による中毒をシガテラと総称し、その魚に含まれている毒素をシガテラ毒(シガトキシン)という。感覚異常やめまい・運動失調・関節痛などがおこる。藻類が生産する毒素を魚が蓄積することにより有毒化する。有毒となる魚は数百種類に上るという。
シクロホスファミド cyclophosphamide
医薬品。抗ガン剤や免疫抑制剤として使われる。多くの副作用が報告されている。
シナプス synapse
興奮をする細胞の間の構造と機能とが特殊化した結びつきをいい、これによって興奮が一方から他方に伝えられる。一般に、電気的シナプスと化学的シナプスに分けられる。電気的シナプスはギャップ結合によって直接電気的結合が作られる。信号伝達の方向は一方性のものと両方向性のものがある。大部分のシナプスは化学的シナプスであり、神経終末と効果器(筋肉など)や神経細胞との間にはシナプス間隙と呼ばれるすきまがある。活動電位が神経終末に達すると、終末から神経伝達物質*がシナプス間隙に放出され、拡散してシナプス間隙を横切り、反対側の膜(後シナプス膜)にある神経伝達物質受容体と結合し、活動電位に影響を及ぼす。シナプスが興奮を伝達する場合興奮性シナプス、抑制作用を伝達する場合抑制性シナプスと呼ばれる。
症例対照研究;=ケースコントロール研究 case-control study
病気などに罹患した人と罹患しない人で、特定の環境影響の有無を比較し、罹患した人はどのような危険因子に曝されたかを調べる研究。罹患率を計算できないので、オッズ比を使う。オッズ比が 1 より高ければ、ある因子(危険因子)と病気の因果関係が強く、1 であれば関係がなく、1 より小さければ逆に保護的であるといえる。
神経芽(細胞)腫 neuroblastoma
神経芽腫ともいう。小児期の腹部の悪性腫瘍で最も多い。この細胞は神経堤(てい)(冠)起源である。神経堤とは、脊椎動物の発生中に神経管の背側の皮下に索状に見られ、後に左右に分かれ、更に移動し、交感神経の神経節や副腎髄質細胞・色素細胞などに分化する。この腫瘍は交感神経系組織、特に副腎から発生することが多い。多量のカテコルアミンを分泌し、尿の中に多量のカテコルアミン代謝物質が検出され、スクリーニングに用いられる。3才までに75%が発症するという。発症頻度は、米国では約7,000人に1人、日本では15,000人に1人であるという。また、約7,000人に1人という札幌市からの報告もある(花井ら、1999)。
花井潤師、竹下紀子、桶川なをみ、水嶋好清、佐藤勇次、藤田晃三、西基、武田武夫、畑江芳郎、内藤春彦 札幌市における新しい神経芽細胞腫スクリーニングデータ処理システムと1999年度スクリーニング結果、札幌市衛生研究所年報, 27.
進行性核上性麻痺 progressive supranuclear palsy
脳の変性疾患であり、歩行や平衡障害を生じる稀な疾患。最も明瞭な徴候は注視障害である。抑うつや感情鈍麻・痴呆などの感情及び行動の変化を示すことが多い。脳の橋や大脳基底核・小脳に障害が見られる。60代で発症することが多い。
信頼区間
信頼区間という。調査研究ではいくつかのグデータから全体のことを推定するが、結果にどのくらいの信頼性があるかを示すために使う。95%信頼区間は、全体の値がこの区間にある確率95%であることを示す。
水尿管症 hydroureter
尿やその他の液体がたまって、尿管が異常に拡張したもの。腎盂と塵肺の拡張を伴うことが多く、その場合水腎水尿管症と呼ばれる。
水銀 mercury
重金属の一種。中毒の場合には神経系などに様々な症状を引き起こす。魚などにはメチル水銀の形で存在し、生物濃縮が起こることが知られている。微量のメチル水銀摂取が胎児や小児に影響を及ぼすことが懸念されている。水銀含有量は地殻で0.08 ppm、土壌中で0.03-0.3 ppm、自然水中で0.01-0.1 ppb、海水中で0.03~1.2 ppbという。水質基準 0.0005 mg/l(≒0.5 ppb)。
スデック症候群 Sudeck syndrome
手足の強い疼痛、浮腫状のびまん性の腫れ、関節可動制限、高度の骨萎縮(スデック骨萎縮)を示し。打撲や骨折、急性関節炎の後に見られる。原因は交感神経を経由する反射機構によるという。
スーパーオキシド superoxide
生体内で作られる活性酸素の一種。非常に活性の強い酸素であり、相当の障害を与え、血清の蛋白質分解酵素を阻害する物質を不活性化し、気腫の原因となる。
スーパーオキシドジスムターゼ superoxide dismutase
スーパーオキシドを分解し、過酸化水素と酸素の形成を触媒する一連の金属酵素酵素。スーパーオキシドによる傷害から防御する。
スピペロン spiperone
向精神薬。ドーパミンと拮抗し、精神分裂病の治療に使われる。
スモ SUMO
SUMOはSmall Ubiquitin-like Modifierの略であり、小さなユビキチン様修飾因子である。SUMOはユビキチンと同じようにいろいろな種に存在。SUMOは他のタンパク質に結合し、そのタンパク質の機能をコントロールする。遺伝子の修飾にも関連する。
静止電位 resting potential
膜電位とも呼ぶ。静止状態の細胞で細胞膜内外の電位差。細胞内は外部に対して-70--90 mVとなる。電位はイオン濃度と膜のイオン透過性によって定まる。
赤血球大小不同症 anisocytosis
赤血球の大きさが不ぞろいなことをいう。多くの血液疾患で認められる非特異的な所見である。
洗顔動作 Preening
動物が前肢で顔を洗う動作で、情動行動の指標。オープンフィールド試験を見よ。
腺腫 adenoma
良性腫瘍で、唾液腺や乳腺・消化管などの外分泌腺、下垂体や・甲状腺・副腎などの内分泌腺、肝臓、腎臓などの腺上皮から発生する。
セントルイス脳炎 St. Louis encephalitis
ウイルスは北米、中南米に広く分布する。カによってのみ媒介される。米国東部においては、何年かごとに流行を繰り返しているが、西部では四季を通じて散発的に発生している。主に夏に患者が発生する。軽症では頭痛を伴う発熱を示し、重症では髄膜炎症状あるいは脳炎症状を呈し、意識障害、痙攣、めまいも現れる。
前立腺 prostate
男性にのみ存在し、膀胱の下に接する長さ2.5 cm、幅 4.0 cm、厚さ1.5 cm 程度の大きさがある。尿道が中を通り、射精管が尿道に開口する。前立腺から射精時に前立腺液が分泌される。機能は十分に解明されていない。性ホルモンの影響を受けやすい。関連する主な疾患は前立腺癌や前立腺肥大がある。
増殖細胞核抗原 proliferating cell nuclear antigen (PCNA)
分裂している細胞の核の中に現れる蛋白質。DNA複製と修復の補助因子である。
ソラニン solanine
ジャガイモの芽や緑色の皮などの部分に含まれているアルカロイド。非特異性コリンエステラーゼ阻害作用や運動中枢神経の麻痺作用・消化管刺激作用を持つ。多量に摂取すると数時間後から嘔吐、下痢、食欲減退などが起こる。死亡する場合もある。
た
胎児(性)ヒダトイン(あるいはフェニトイン)症候群 fetal hydatoin (or phenytoin) syndrome
母親が妊娠中に抗けいれん(てんかん)剤ヒダトインやフェニトインを服用した場合に生じる症候群。異常には、成長と精神発達の障害、顔面の形態異常、骨や関節・心臓・その他の異常がある。神経芽細胞腫や間葉細胞腫・ウイルムス腫などを発生することも報告されている。また、奇形を伴わなくとも、神経芽細胞腫が発生した例が報告されている。
多染性 polychromasia (赤血球の)
赤血球を染色(ギムザ染色)すると、一般には赤く染まる。時には赤みをおびたに青く染まる場合がある。このような場合多染性と呼ぶ。多染性赤血球は細胞内にRNAを含む赤血球である。悪性貧血では多染性赤血球が増加する。
多臓器不全 multiple organ failure, MOF
重要な器官が同時に又は短期間に次々と機能不全となること。これらの器官は心臓・肺・肝臓・腎臓・消化管・中枢神経・凝固系などがあり、3つ以上に障害が現れた場合をいう。一般に予後は悪く、死亡することが多い。
立ち上がり rearing
行動学で用いられる試験項目で、一定時間に後肢で立ち上がる回数を調べる。探索行動の指標となる。オープンフィールド試験*を参照。
男性ホルモン → テストステロン
中間症候群 intermediate syndrome
中間症候群は重度の有機燐急性中毒から外見上十分に回復した後、1-数日後に発症するもので、まれではない。急性中毒発作の後、遅発性神経毒性が現れる前に発症するので中間症候群といわれる。通常急性の呼吸及び顔面や頸部・四肢の近位の筋肉の麻痺を伴う。この症候群では死亡率は高いことが知られている。この症候群を起こすものにはジメトエートやフェンチオン・フェニトロチオンなどが知られている。
テストステロン testosterone
精巣の間質(ライデッヒ)細胞で作られる男性ホルモンで、二次性徴の出現や、蛋白同化作用を持つ。塩類の貯留も促進する。
電子伝達系
好気呼吸時の複数の代謝系の最終段階の反応系。水素伝達系、呼吸鎖などともいう。ミトコンドリア内膜の内側と外側にプロトンの濃度差を作り、この濃度勾配を利用して、最終的にATP合成酵素がATPを生成する。内膜に存在する呼吸鎖複合体Ⅰ~Ⅳに電子が流れることによってプロトンが膜の内側から外側に汲み出されプロトン濃度勾配が生じる。
ド(ー)パ DOPA
ドーパミンが体内で合成される前駆物質。パーキンソン病の場合、大脳基底核のドーパミンレベルが低下するが、ドーパミンは血液脳関門を通過しない。このため、血液脳関門を通過しやすいドーパを投与する。副作用に、起立性低血圧や不整脈・吐き気・おう吐などが見られる。
ド(ー)パミン
神経伝達物質であり、中脳にある黒質から大脳基底核の線条体にのびている神経繊維で、神経伝達物質として使われているのが代表的な例である。この系のドーパミン欠乏とパーキンソン病との関連が良く知られている。
トランスサイレチン transthyretin
血液中にある甲状腺ホルモンと結合する蛋白質。この蛋白質の異常とアルツハイマー病との関連が追及されている。
トーレット症候群 Tourette's syndrome
原因不明の神経障害で、チックや鼻を鳴らすこと・臭いをかぐこと・不随意の発声が見られる。突発的なわいせつな発言が共通である。
な
ナトリウムチャンネル sodium channel
ニコチン(性)受容体 nicotinic receptor
アセチルコリン受容体の一種で、アセチルコリンと結合すると、非常に短い潜時で持続時間も短い興奮性の電位は発生する。
尿細管 renal tubule → ネフロン
腎臓では尿が作られる。腎臓の皮質にある腎小体で原尿が作られ、原尿は尿細管に入る。尿細管のはじめの部分は近位尿細管と呼ばれ、原尿中の水とナトリウム65-90%がここで再吸収される。また、ここで糖やアミノ酸などの再吸収が行われる。これに続く部分は細くなり、ヘンレの係蹄と呼ばれる。次に尿細管は再び太さを増し、遠位尿細管と呼ばれ、水やナトリウムの再吸収を行い、ホルモンに支配されていると考えられる。右図を参照。
尿素窒素 urea nitrogen (BUN)
尿素は人では蛋白質代謝の主な最終産物であり、主な排泄経路は腎臓を経由するので、腎臓機能の指標とされる。通常25-30 g が尿中に排泄される。血清中で10-15 mg/dlが正常範囲とされる。腎機能低下や腎不全などで高い値を示し、肝不全や妊娠などで低い値を示す。また、食事内容や
運動などによっても値が変動する。
乳酸脱水素酵素 → LDH
ヌクレオシド nucleoside
五単糖(デオキシリボースまたはリボース)の1位にプリン塩基またはピリミジン塩基が結合したもの
ヌクレオチド nucleotide
ヌクレオシドにリン酸基が結合したもの
脳室 ventricle
脳内部にある脳脊髄液によって満たされている空所。中枢神経系は、神経管と呼ばれる筒状構造から発生する。その空所は脳室として残る。大脳半球には側脳室、間脳には第三脳室、中脳には中脳水道、橋小脳には第四脳室、脊髄には中心管がある。
農薬 pesticide
有害あるいは不用な生物を殺す薬剤。pesticide はpest + -cideからなり、pestとは有害な生物で、 -cide は殺すものを示す接尾語。農薬取締法による定義は次の通り。「第1条の2 この法律において「農薬」とは、農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス(以下「病害虫」と総称する。)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤(その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。)及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう」。この条文から分かるように、農作物以外の対象に使われる場合は、農薬取締法の適用外となる。