DDVP(ジクロルボス)論文12 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・7.免疫系への影響
DDVP が液性および細胞性免疫を阻害することが分かっている。
DDVP をウサギに経口投与した場合、免疫抑制が見られた(Desi et al. 1978)。

サルモネラ菌接種後、DDVP をLD50 の1/40、1/20、1/10 を投与し、液性及び細胞性免疫を調べた。

血清抗体は投与量に依存した減少を示し、ツベルクリン検査で測定した皮膚発赤は同じように量依存性の低下を示した(Desi et al. 1978a)。Zabrodskii et al. (2002)はDDVP が免疫抑制をし、機械的傷害と相加作用があるという。
東京で起こったサリン事件で、サリン合成中に生じたジイソプロピルメチルホスホネートはナチュラルキラー細胞と細胞毒性T リンパ球との活性を抑制することが分かった。
Li et al. (2002)は有機リン農薬もナチュラルキラー細胞や細胞障害性T 細胞の活性に対する有機リンの影響を、次いでDDVP のマウス脾臓ナチュラルキラー細胞や細胞障害性T リンパ細胞、リンホカイン活性化キラー細胞、ヒトのリンホカイン活性化キラー細胞の活性に対する影響をインビトロで調べた。

またメカニズムを調べるためにセリンプロテアーゼ阻害剤の影響や、グランザイム活性に対するDDVP の影響も調べた。
有機リンは人間のナチュラルキラー細胞活性を投与量に依存して低下させるが、その程度は有機リンによって異なる。

DDVP はナチュラルキラー細胞やリンホカイン活性化キラー細胞、細胞障害性T 細胞の活性を投与量に依存して低下させる。セリンプロテアーゼ阻害剤はDDVP と同じような阻害を示した。またDDVP はグランザイム活性を量に依存して減少させた。
以上は、有機リンはナチュラルキラー細胞やリンホカイン活性化キラー細胞、細胞障害性Tリンパ球活性をグランザイム阻害によって低下させることを示す。
*リンホカイン活性化キラー細胞:インターロイキン2 によってリンパ球から誘導されるキラーT 細胞。腫瘍細胞を殺傷するように製造ラボで操作が加えられたものもある。
**グランザイム:細胞障害性T 細胞とナチュラルキラー細胞は主Fas/Fas リガンドとパーフォリン/グランザイムという2 経路により標的細胞を殺す。

ターゲット細胞識別後、細胞傷害性顆粒がエクソサイトーシスによってキラー細胞とターゲット細胞により作られる免疫シナプス内に放出され、顆粒内
容物がターゲット細胞に入って殺傷作用を誘導し、ターゲット細胞のアポトーシスを起こす。

顆粒内容物は、主にパーフォリン、グラニュリシン、グランザイムタンパクファミリーである。
ヒトNK/CTL 細胞中にはグランザイムA、B、H、K、M の5 種類が、ラットでは8 種類のグランザイム(A、B、C、F、I、J、K、M)、マウスでは11 種類(A-G、K-N)が発見されている。

グランザイムAとB は大量に発現されるため、機能研究が最も進んでいる。残りは希少グランザイム(orphan granzyme)と呼ばれる。希少グランザイムは自然免疫反応細胞であるNK 細胞中に大量に発現される。細部は未解明の所が多い。
有機リン農薬が人間のナチュラルキラー細胞やリンホカイン活性化キラー細胞、細胞障害性Tリンパ球の活性を阻害し、この阻害の一部はグランザイムを介すると報告されている。
Nakadai et al. (2004)はインビトロでFas 抗原陽性細胞YAC-1 細胞を用いて、マウスのナチュラルキラー細胞や細胞障害T リンパ球、リンパ球活性化キラー細胞に対するDDVP の影響を調べ、DDVP によるナチュラルキラー細胞やリンホカイン活性化キラー細胞、サイトカイン活性化リンパ球の活性阻害はFasL/Fas 経路の障害によるものであると報告した。
細胞性免疫を担当するナチュラルキラー細胞やリンホカイン活性化キラー細胞、細胞障害性Tリンパ球はパーホリンやグランザイム、グラニュリシンを含む顆粒放出により標的とする細胞を破壊する。
DDVP がグランザイム活性阻害によってこれらの細胞活性を阻害することが分かっているので、Li et al. (2005)はDDVP がナチュラルキラー細胞のパーホリンやグランザイム、グラニュリシンの発現を阻害するかどうか調べた。

インターロイキン2 に依存しないヒトのナチュラルキラー細胞系を用い、DDVP が顆粒内のパーホリンやグランザイムA、グラニュリシンの発現を低下させ、これは脱顆粒をによることが分かった。

またDDVP はパーホリンやグランザイム、グラニュリシンのmRNA の転写も抑制することが分かった。
またLi et al. (2008)はDDVP がナチュラルキラー細胞活性を抑制し、細胞内グランザイムBやグランザイム3/k レベルを低下させると報告している。
有機リンがナチュラルキラー細胞の活性を抑制するメカニズムを明らかにするため、Li et al.(2007)は有機リンがナチュラルキラー細胞にアポトーシスを起こさせるかどうかを、インターロイキン2 から独立である人間のNK 細胞系で調べた。
これらの細胞系にDDVP やクロルピリホスを作用させ、両有機リンはアポトーシスを誘導することを発見した。

DDVP は細胞内カスパーゼ-3 を増加させ、カスパーゼ-3 阻害剤はDDVP によるアポトーシスを阻害した。

クロルピリホスによるアポトーシスは高濃度ではDDVP よるアポトーシスより速やかに起こるが、低濃度ではクロルピリホスよりもアポトーシスを強く誘導する。
以上のことは、有機リンによるナチュラルキラー細胞活性の阻害はアポトーシスがその原因の一部であることを示していると、Li et al. (2007)は考えた。
またDDVP やマラチオンによる亜急性中毒は、Th1 リンパ球の活性これに関連するや免疫反応、インターフェロンg 生産を低下させる(Zabrodskii et al. 2008)。