・4.生化学的影響
コリンエステラーゼ阻害
DDVP はアセチルコリンエステラーゼやブチルコリンエステラーゼ(血漿エステラーゼ)を阻害することが知られ、この酵素活性は有機リン中毒などのマーカーとして重要である。
アシルペプチド加水分解酵素阻害
有機リンはアセチルコリンエステラーゼ活性を阻害するが、それ以外の認識などに関係する系にも影響する。
Pancetti et al. (2007)は有機リンの新しい作用点としてアシルペプチド加水分解酵素*に関するレビューを書き、その中でこの酵素はアセチルコリンエステラーゼよりDDVP のような一部の有機リンの影響を受けやすいと述べている。
*アシルペプチド加水分解酵素:アシル基とはカルボニルR-COOH から-OH がないR-CO-のこと。
カルボン酸アシル基ともいう。
この基がペプチドと結合したものをアシルペプチドといい、これを加水分解する酵素をアシルペプチド加水分解酵素という。
この酵素は血液や脳など様々な組織に分布し、アセチルコリンエステラーゼよりも一部の有機リンに敏感に阻害され(Quistad et al. 2000)、阻害によりアポトーシスを誘導し、この活性低下が癌に関係があるという報告がある。
また認識能力にも関係すると報告されている。
アセチルコリンエステラーゼに影響を与えないレベルのDDVP をラットに投与するとムスカリン受容体のを減少させる作用があり、それが細胞内信号系に影響を与えるという報告がある(Verma et al. 2009)。
細胞内信号系は生命の基本である細胞内の諸機能に影響を与えるものであり、それが何をもたらすかは十分に分かっていない。
糖代謝・糖尿病
有機リン剤は糖代謝に影響を及ぼし、高血糖を起こすことが知られており、DDVP は肝臓のグリコーゲン量を減らすと知られている。
DDVP 投与(20mg/kg、1-3 日)後に、肝臓と膵臓のグルコキナーゼのm RNA とインシュリンのm RNA とのレベルをラットで調べた。DDVP は肝臓のグルコキナーゼ活性を減少させるが、グルコキナーゼ*のmRNA レベルは増加した。
これに対して膵臓のグルコキナーゼとmRNA レベルは投与に影響されなかった。インシュリンレベルは影響を受けない。
この結果は、肝臓のグルコキナーゼ活性の減少が、DDVP によるグルコース代謝への悪影響の原因かも知れないと、Romero-Navarro et al. (2006)は報告している。
*グルコキナーゼ:グルコースとアデノシン三リン酸からグルコース-6-リン酸を合成する酵素。
一部の環境毒物と糖尿病とが人間で糖尿病発症に関連すると思われている。
Montgomery et al.(2008)は1999-2003 年の農業衛生研究で33,457 人の農薬使用免許保有者で特定の農薬被ばくと尿病発生との関係を調べた。研究対象の1,176 人が糖尿病であった。
使用により糖尿病発生が増えると思われる農薬はアルドリンやクロルデン、ヘプタクロル、DDVP、トリクロルホン、アラクロル、シアナジンであった。
有機塩素農薬や有機リンと糖尿病との関連は以前に行われた人間や動物で行われた研究と一致するという。
runより:やはり血糖値に関与してましたね、化学物質過敏症の合併症だと考えたのはあながち間違いではないようです。
内分泌物(ホルモン)を狂わせる化学物質過敏症では十分考えられるんですね。
この論文はまだまだ続きますが一旦用事に行ってきます。
また後から掲載します。