DDVP(ジクロルボス)論文4 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・種差
人間では個人差があることが知られているが、動物の種間では大きな差があることが知られている。
シロアシマウス(Peromyscus leucopus;普通のマウスとは種が異なる)は、普通のマウスよりDDVP に敏感なことが知られているが、この原因は血清コリンエステラーゼが低いためであると考えられている(DiGiacomo et al. 1987)。

ペット・家畜での中毒事例
DDVP をしみこませたノミカラーをつけたネコ50 匹中21 匹で、アタキシア(運動失調)と抑うつが生じた。5 匹のネコが死亡した。

全てのネコで全血のコリンエステラーゼ活性が有意に低下し、頸部の皮膚炎が37%で起こった(Bell et al. 1975)。
500 mg のDDVP を含むノミカラーを23 匹のネコに1 週間から15 週間つけた。

明瞭な中毒症状は現れず、若いネコで体重増加も有意な影響を受けなかった。

全血コリンエステラーゼはカラーをつけた最初の週に減少し、樹脂中のDDVP 濃度が次第に減少するにつれて正常に戻る前に、5から8 週間低いままであった。

中毒症状はカラーをつけた1 週間以内に起こった。中毒発現には温度と湿度が関連すると思われる(Seawright and Costigan 1977)。

バナストリップの事例
バナストリップはDDVP が蒸発しやすいことを利用し、DDVP を空中に漂わせる事によって害虫などの駆除や防除を使用とする製品である。

生まれたばかりの牛が近くに吊しておいたバナストリップによって中毒になり、下痢をした例が報告されている(Frankenhuis 1976)。

長期的な影響
有機リン被ばく労働者に関する研究で、病気が長引くメカニズムを理解する必要がある。
急性毒性を主にアセチルコリンエステラーゼ阻害により、明白な中毒の持続性影響をコリン作動性症候群の直接的興奮毒性などにより説明可能であるが、低レベル被ばくの影響はこれらのメカニズムからは考えれない。
多くの有機リンはタンパクとの付加物を作り、付加物はすぐにはなくならず、これが長引く健康悪化が起こるメカニズムかも知れない。
Carter et al. (2007)はDDVP やアザメチオホス、クロルフェンビンホス、クロルピリホスオクソン、ダイアジノンオクソン、マラオクソンがインビトロとラット脳や胸腺で付加物を作ることを発見した。

これは低レベルで形成され、付加物のパターンの多様性は一般的なものでなく、各有機リンで特異的であると思われ、ことは疫学研究に新たな問題を投げかける。さらに血中アルブミンとの付加物も見られる。
有機リン急性中毒の影響は良く分かっているが、低レベル慢性被ばくに関しては良く分からず、中毒が起こらない中程度の被ばくの影響も解明されていない。
Binuckumar et al. (2010)は有機リンの慢性被ばくが肝機能不全を起こすメカニズムを解明しようとし、DDVP 慢性投与(6 mg/kg、皮下、12 週間)による肝臓のミトコンドへの影響をットで研究した。
この結果、ミトコンドリアのチトクロムオキシダーゼの電子伝達活性が低下すること、および複合体ⅠとⅡの活性変化を招く。電子伝達系複合体の変化はミトコンドリア内のATP 合成とATPレベルに悪影響を及ぼす。

またDDVP はミトコンドリアカルシウム取り込みやチトクロムC や活性酸素レベルの増加を招く。

活性酸素レベル上昇は肝酵素(ALR、AST、ALP) の増加を招くと思われる。DDVP によるミトコンドリアの電子顕微鏡な形態学的変化も起こる。DDVP 慢性被ばくにより肝機能不全になるのは、DDVP 慢性被ばくがミトコンドリアのエネルギー生産を障害するためであると、Binuckumar et al. (2010)は考えた。