・出典:日本東洋医学会
http://www.jsom.or.jp/universally/
・A-4 EBMに基づいた喘息治療ガイドライン2004
厚生労働科学特別研究事業 診療ガイドラインのデータベース化に関する研究班
(主任研究者 宮本昭正 日本臨床アレルギー研究所所長)
協和企画、2004年9月20日第1版第1刷発行
■A4-1麦門冬湯
疾患:
咳感受性の亢進している気管支喘息
引用など:
渡邉直人, 成剛, 福田健. 咳感受性の亢進している気管支喘息患者に対する麦門冬湯の効果の検討. アレルギー 2003; 52: 485-91. MOL, MOL-Lib
CPG中のStrength of Evidence:
Ⅲ: 非ランダム化比較試験による
CPG中のStrength of Recommendation:
A: 行うことを強く推奨
漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン 2010
日本東洋医学会 EBM 特別委員会 エビデンスレポート/診療ガイドライン・タスクフォース
有効性に関する記載ないしその要約:
咳感受性の亢進している気管支喘息患者に対して、麦門冬湯1日3回9g投与した結果として下記の記載がある。
『麦門冬湯投与群は咳点数、治療点数を有意に減少させ、カプサイシン咳閾値の有意な改善を認めた。』
■A4-2柴朴湯
疾患:
アスピリン喘息
引用など:
西澤芳男, 西澤恭子, 吉岡二三, ほか. 柴朴湯吸入の抗アスピリン喘息効果. 耳鼻咽喉科展望 2001; 44: 5-13.
EKAT 構造化抄録[PDF]
CPG中のStrength of Evidence:
Ⅲ: 非ランダム化比較試験による
CPG中のStrength of Recommendation:
B: 行うことを推奨
有効性に関する記載ないしその要約:
アスピリン喘息に対して、柴朴湯100㎎/mL、×5mL、3回/日、生食3回/日を投与した結果として下記の記載がある。
『アスピリン誘発気管支肺胞洗浄液中ロイコトリエン、ECP、好酸球、IL-3、4、5、8の有意な低下を認めた。』
備考:
柴朴湯は吸入
■A4-3柴朴湯
疾患:
気管支喘息
引用など:
西澤芳男, 西澤恭子, 吉岡二三, ほか. 柴朴湯の抗不安効果に基づく抗気管支喘息治療効果: 抗不安薬との他施設無作為前向き比較検討試験. 日本東洋心身医学研究 2002; 17: 20-7.
EKAT 構造化抄録[PDF]
漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン 2010
日本東洋医学会 EBM 特別委員会 エビデンスレポート/診療ガイドライン・タスクフォース
CPG中のStrength of Evidence:
Ⅲ: 非ランダム化比較試験による
CPG中のStrength of Recommendation:
B: 行うことを推奨
有効性に関する記載ないしその要約:
気管支喘息に対して、柴朴湯7.5g/日、クロチアゼパム (15~30㎎/日) を投与した結果として下記の記載がある。
『柴朴湯投与群において有意に気道炎症の改善効果を認め、不安や抑鬱状態の改善も認めた。』
■A4-4漢方薬、A4-5小青竜湯、A4-6柴朴湯、
A4-7麻杏甘石湯、A4-8補中益気湯、A4-9八味地黄丸
疾患:
喘息
有効性に関する記載ないしその要約:
『前文:喘息の漢方療法は伝統医学として長い歴史がある。
古来、喘息は漢方療法のよい適応とされ、多くの経験に裏づけされた一定の治療指針が検討されている。
漢方薬の投与は随証治療といって、患者の体質、体力とその時点での闘病反応の強弱によって方剤を選ぶという原則がある。
これは薬剤が天然生薬であり新薬のような攻撃的な薬効は有していないので、投与前にあらかじめresponderとnon-responderを区別するという経験則に基づいている。
このような疾患へのアプローチは無作為化比較試験の実施を困難としている。
一般に喘息発作の急性期には麻黄剤 (小青竜湯、他) を、慢性期には体質改善を目指して柴胡剤 (柴朴湯、他) を投与するのが原則である。
麻黄剤はエフェドリン類を含む麻黄を主薬とした方剤で、気管支拡張作用や鎮咳作用を有し、効果の発現は比較的早い。
柴胡剤は抗炎症作用を有し、長期投与によって症状の安定がもたらされる。
脾虚とは消化機能全般の機能低下を意味しており、補剤 (補中益気湯、他) の投与によって、栄養状態の改善と体力の増強を図る。
高齢者の喘息には腎虚の病態があることが中医では重視されており、それらのケースには補腎剤である八味地黄丸などの適用が有用とされている。
現在の喘息での漢方療法の目安を示す。
①重症のケースや発作がひどいときは当然、西洋薬を優先する。
②軽症、中等症の喘息にはよい適応があり、病型にはそれほどこだわらなくてもよい。
③漢方の選択はなるべく証 (東洋医学的に見た診断と治療) に基づいて行う。
④漢方薬の効果はすぐには現れない、約3~4週目に効果の有無をチェックし、効果が実感できるときは長期 (半年~2年) に服用を続ける。
効果が実感できないときには、その時点で、方剤の見直しを行う。
漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン 2010
日本東洋医学会 EBM 特別委員会 エビデンスレポート/診療ガイドライン・タスクフォース
推奨: 漢方薬は長年の経験に基づいて喘息での有効性が示されている伝統的医薬である。
柴朴湯は喘息における長期管理での有用性が示されている。
小青竜湯、麻杏甘石湯は気管支拡張作用で急性期に使用されてきた。
最近、咳感受性の亢進している喘息における麦門冬湯の有効性が示された。
漢方薬は重症喘息や高度発作に適応でなく、軽症・中等症喘息での効果が見られる例に長期的に使用することが望ましい。
科学的根拠
漢方薬は東洋医学的証に基づく治療であり、適切な偽薬が得難いこともあり、EBMに対応する無作為化比較臨床試験は行われていない。
新しい知見としては咳感受性が亢進している喘息患者に麦門冬湯を投与し、気道炎症の指標として喀痰好酸球や末梢血好酸球の改善を認め、血清中のECPの減少も認めた。また有意に咳感受性も低下させた。
また、柴朴湯においては従来から知られている喘息症状の改善率、ステロイド薬の減量率が非投与群に比して優れる報告以外にアスピリン喘息に対する抑制効果や抗不安効果に基づく喘息の治療効果も示されている。
結論
主として臨床的経験から、そして、少数ではあるが比較対照試験からその有効性が示されており、軽症、中等症喘息の長期管理に単独に、また西洋医学薬と併用することができる。』