神経障害標的エステラーゼ (神経毒エステラーゼ)2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・神経毒エステラーゼ活性が低いヘテロのマウスは、正常なマウスと比較して、神経毒エステラーゼを阻害する有機リンに敏感であることが分かった。[Winrow et al. 2003]

このことは神経毒エステラーゼの老化による毒性獲得が神経障害の原因ではなく、神経毒エステラーゼの阻害そのものが神経毒性の原因であることを示している。
 
ウィンローらは、ヘテロのマウスの行動を調べた。神経毒エステラーゼ阻害剤を投与しない場合、ヘテロのマウスは正常のマウスより、多動性の指標である活発な行動を示した。

逆に神経毒エステラーゼ阻害剤を投与すると、正常なマウスの行動は増加した(多動性を示す)が、ヘテロのマウスの行動は減少した。

このことは神経毒エステラーゼ減少が多動性を招くことを示している。

ヘテロのマウスに神経毒エステラーゼ阻害剤を投与すると行動が減少したが、これは神経毒エステラーゼの過度の阻害が行動不能状態を招いたためであろう。[Winrow et al. 2003] 

現在、多動性障害を示す子供や大人が増加していると言われている。

このような人たちは、神経毒エステラーゼ阻害剤に敏感な可能性があるので、有機リン剤のような化学物質は避けた方が賢明であり、同様に健康である人も避けた方が良い。
 
人間では神経毒エステラーゼ活性に大きな差があることが知られている。[Mutch et al. 1992] このため、毒ガスや神経毒エステラーゼ活性を阻害する有機リン剤に対する感受性に差がある可能性がある。

人間における神経毒エステラーゼ活性の個人差は6倍ほどあることが知られている。[Golomb 1999]

 これらのことで、湾岸戦争に従軍した一部の人が発症した理由を説明できるかもしれない。

また、人間集団中に影響を受けやすい人がいることにも注意すべきである。
 
ウィンローらの研究は、神経毒エステラーゼ活性の低い動物は、神経毒エステラーゼを阻害する有機燐剤に敏感であり、多動性障害とも関連があり得ることを示しているが、有機リンがリン酸化するのは神経毒エステラーゼとアセチルコリンエステラーゼに限られない。

この候補として、細胞内の情報伝達にかかわるプロテインキナーゼAや細胞骨格・転写因子など重要なタンパク質も有機リン誘導遅発性神経障害に関係する可能性が指摘されている。[Damodaran et al. 2002]

この後の研究で、神経毒エステラーゼはリゾレシチン(リゾホスファチジルコリン)を良く分解するリゾホスホリパーゼの一種ではないかと考えられ、リゾレシチン分解が阻害されることにより、リゾレシチンが局所的に蓄積し、それが膜の不安定化を招くことが考えられている。そ

の理由は次のことから推測されている。[Gary et al. 2002]
 
・ 神経毒エステラーゼリソフォスファターゼ活性は、野生型のマウスより、神経毒エステラーゼの遺伝子が半数不足している遺伝子組み換えマウスで41-45%低い。
・ 第二に、遅発性神経毒物又は阻害剤の阻害力は多様であるが、リゾフォスファターゼと神経毒エステラーゼで阻害力がほぼ同じである。
・ マウスに複数回腹腔投与した場合、遅発性神経毒物は、脳の リゾフォスファターゼと神経毒エステラーゼを同程度に阻害する。
・ 生体の脳のリゾフォスファターゼ阻害は、一般に遅発性神経毒性と相関する。
 
リゾレシチンは赤血球を溶血させることが知られている燐脂質であり、古くから投与すると神経組織で脱随や無随神経の変性を起こすことが知られている。