・Q5 海外におけるリスク評価等の概要について教えてください。
海外においては、2008(平成20)年に欧州食品安全機関(EFSA)が、ラットへ
の影響から無毒性量(毒性試験において有害な影響が観察されない最大投与量)を5 mg/kg 体重/日としました。
また、耐容一日摂取量(毎日一生涯摂取し続けても、健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量)を0.05 mg/kg 体重/日としました。
一方、低用量の摂取については2008(平成20)年に、米国、カナダで、乳幼
児への影響に関して懸念を示す報告書が公表されています。
その後、各国において低用量の摂取による乳幼児への影響を中心として、以下のように再評価が行われておりますが、一部の国では管理措置を見直す動きがあります。
欧州食品安全機関(EFSA):
2010(平成22)年9月30日に、BPAに関する科学的意見書を公表しました。
その内容は、食品と接触する物質、酵素、香料及び加工助剤に関する科学パネル(CEFパネル)が、2007年から2010年7月に公表されたヒト及び実験動物に関する研究論文をレビューした結果、BPAの生殖発生毒性に基づいて2008年に設定した現行のTDI 0.05 mg/kg 体重/日の修正を必要とするような新たな研究は特定できなかったというものです。
また、生殖発生毒性以外にも実験動物の発達段階における脳への影響、免疫への影響及び乳がんの促進を報告するいくつかの論文がありましたが、方法論及び実験デザイン等に欠点があったため、ヒトへの影響は評価できないとされています。
今後、ヒトの健康に関連のあるデータが利用可能になった場合、科学パネ
ルは本意見書を再検討することとされています。
米国食品医薬品庁(FDA):
2008(平成20)年に「食品接触材へのビスフェノールAの使用に関する評価
書案」を出していましたが、その後の研究結果に基づきBPAの影響について懸念を持ったことから、2010(平成22)年1月に「食品接触材へのビスフェノールAの使用に関する現状」を公表し、その中において暫定的に以下のような方針を示しています。
○ FDAは以下のような適正な措置を実施して、食料供給におけるヒトBPA曝露を削減する。
BPAを含んだほ乳びん等の米国市場向け製造を中止しようとする業界の動向の支持、乳児用調製乳缶の内面塗装剤としてBPA代用物の開発の促進等。
○ FDAは、BPA管理のためのさらにしっかりとした規制の枠組づくりに向けた移行を支援する。また、FDAはさらなる意見公募を行い、BPAをめぐる科学的知見について外部からの情報提供を求める。
また一方で、FDAは乳児用調製乳や食品は、安定した栄養源としての利点
がBPA曝露による潜在的リスクを上回ることから、これらの利用を変更する
よう各家庭に勧めるものではない、としています。
カナダ保健省(Health Canada)
カナダ保健省は2008年(平成20)年8月に、食品パッケージを通じたBPAへ
の曝露により、新生児や幼児を含めた一般の消費者の健康リスクが生じるとは考えられないという結論を公表しています。
一方、カナダガゼット(官報)では2010(平成22)年3月に、新生児及び
乳児の健康保護を目的として、予防的にポリカーボネート製ほ乳びん等の販売及び使用禁止についての規則を公表しています。