・3 今後の取組
公害紛争処理制度を所管しており、また同時に国として調停、裁定等を行う公害等調整委員会の事務局では、都道府県公害審査会等の事務を所管する都道府県の担当部局と連携を図りつつ、今後以下のような取組を具体的に進める必要があると考えている。
(1)公害紛争処理制度についての広報の取組取組の第一は、現在あまり一般に認知度が高くないといわれている公害紛争処理制度についての広報を充実・強化していくことである。
裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成19年4月施行)第4条では、裁判外紛争解決手続について国民への理解を増進するための措置を講じることは、国及び地方公共団体の責務ともなっている。
国民一般や住民を対象とする広報のほかに、法律問題等に対する相談や紹介を行っている機関や団体である日本司法支援センター(法テラス)や弁護士会、また公害等調整委員会に対して原因裁定の嘱託をすることができることとされている裁判所に対しても、制度の特長についての情報提供などを行っていくことが重要であると考えている。
今後、様々の機会を利用して継続的に広報を行っていきたいと考えている。
また、個々の事件や事案についても、ケースに応じて当事者に対し適切な教示・案内を行っていくことがきめ細かな対応として求められると思われる。
例えば、都道府県と市町村等との間で公害苦情処理の状況についての情報や意見の交換を行う中で、苦情として処理するよりも調停等の公害紛争処理手続を利用した方が望ましいケースについては、被害者・加害者双方に対して積極的に手続について紹介していくことなどが有効な取組ではないかと思われる。
管轄の問題や原因解明の困難さから公害等調整委員会で事件処理を行った方が適切な事件(原因裁定等の対象となる事件)があれば、当委員会として適切に受け付けていくことも必要ではないかと考えている。
(2)利用者の利便性の向上を図るための公害等調
整委員会の取組公害等調整委員会で事件処理を行うのが適当な事件があっても、距離的、時間的に東京は遠く、現実には、地方在住者が身近な紛争について、当委員会の機能を利用するのは難しいといった声がある。
そうした声に対応し、公害等調整委員会と地方在住者の距離を可能な限り縮めていく工夫、努力を行っていくことが重要である。
このため、来年度からは例えば現地における審問期日の開催など、公害等調整委員会の委員や事務局職員が積極的に現地に赴いて手続を行うこととしている。
また、都道府県公害審査会等との連携により、審査会等に係属する調停事件において原因の解明に困難が伴う場合に公害等調整委員会の高度の専門性を備えた原因裁定機能について当事者に紹介していただき、当事者からの求めに応じて、原因裁定事件として受け付け、迅速・適正な判断を行うこととしている。
都道府県公害審査会等では当事者間の主張が折り合わず、調停等が打切りに至るケースも考えられるが、そうした場合に更に公害等調整委員会の裁断的手続である裁定(損害賠償についての責任裁定及び因果関係についての原因裁定)を利用する途があることを紹介していただくことも重要と考えている。
公害等調整委員会の事件解決能力を高めていくため、原因解明を行うための専門的な調査の充実や審理の迅速化にも努力していきたいと考えている。