公害紛争処理制度の利用の促進に向けて2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・たしかに、公害紛争はもともと身近な問題であることから、まずは身近な行政サービスを行っている市町村等に公害苦情として寄せられることが自然であり、市町村等の苦情処理の努力は引き続き重要である。

しかしながら、苦情処理としては解決が困難な事件については、当事者がそれぞれの主張や立証を一層法的に整理した形で行い、それを受けて専門的な第三者機関が調停、裁定などの形で解決を図る都道府県の公害審査会等や国の公害等調整委員会の紛争処理手続による対応が望ましい。

また、民間事業者間の権利義務に関する紛争など最初から紛争処理手続を利用したほうがよいようなケースも考えられる。にもかかわらず、現状ではこのような紛争の性質等にふさわしい処理方法の選択が必ずしも的確に行われず、結果として処理の流れがうまく流れていないことから、市町村等に過大な負担がかかっている面があるのではないだろうかということである。

2 課題と対応の方向
しからば、市町村等の負担をできるだけ軽減し、紛争処理手続による公害紛争の迅速で適切な解決を図っていくにはどうすればよいのか。

課題と対応の方向は、次の4点に整理できると考えられる。


q 公害紛争処理制度が国民・住民にとって身近な公害問題を扱う手続であることを再認識することが必要である。

たしかに、現行の法律はもともと当時悲惨な健康被害をもたらした重大な社会問題である産業公害型の公害問題を念頭においていたのであって、隣近所の騒音問題などを扱うのは本来の姿としてはいかがなものかとの意見もあるであろう。

しかしながら、時代の流れとともに国の規制の強化と産業側の努力により産業公害型の公害が減少し、都市型、生活型の公害の増加へと公害の形態が変容し多様化する中で、人々の環境意識の高まりもあり、全体として紛争は小粒とはなったが増加した。

そして、そうした小粒の事件についても専門的な知見を活用したADRでの解決が期待されるようになったことを踏まえる必要がある。

このような認識の下に、公害紛争処理法第2条で引用する環境基本法(第2条第3項)にいう公害の概念に係る「相当範囲にわたる」という言葉の意味も、できるだけ幅広にとらえていくこと(被害を訴えている者が一人でも内容からその被害が他にも及びうる場合には紛争処理の対象とするなど)が必要であろう。


小規模の紛争であっても、現に公害被害を訴えている人がいれば、利用者のニーズに応えて紛争処理制度により可能な限り積極的にその解決に取り組む、言い換えれば身近な紛争処理制度としての利用を今まで以上に促進していくことが大切ではないかと考えられる。

w 公害紛争処理制度は行政の手続であるので、全体として的確かつ効率的に運用していくために、まず行政の間、すなわち市町村等、都道府県、国の間の連携を進め、紛争の解決を望む者がそのメリットを認識して進んでこの制度をスムーズに選択、利用できるよう、国民、住民に対して適切な情報提供を行うことが重要である。

これを徹底する上で、関係機関や関係団体(日本司法支援センター(法テラス)、弁護士会等)に対する情報提供も必要であろう。

e 制度の利用者にとっての利便性の向上を図っていく必要がある。

そのためには、少しでも使い勝手が良くなるように、制度運用上の各種の工夫を可能な限り行っていくことが重要と考えられる。

これは行政上の業務改革を利用者の視点・立場に立って行うことでもある。

r 以上のような考えのもとに対応を具体化していくに当たり、業務全体の効率化を図りながら進めていく必要があることも、付け加えておきたい。