食品における金属について9 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・8.ヒ素(arsenic) As
来 歴
ヒ素は、自然環境中や生物体に広く存在するが、天然に単体として存在することは少なく、鶏冠石As4S4、石黄As2S3、硫ヒ鉄鉱FeAsSなど硫化鉱物として存在することが多い。

ヒ素の原料である三酸化ヒ素(As2O3)はこれらのヒ鉱の焙焼や銅製錬工程で排出するガスの副産物として得られる。

ヒ素には、無機ヒ素化合物、有機ヒ素化合物、揮発性のアルシンガスの形態がある。
ヒ素は三酸化ヒ素として世界で年間5 ~5.3万トン使用されている。

その主要用途は無機ヒ素系農薬と工業薬品の原料で全体の90%以上を占め、亜ヒ酸ナトリウム、ヒ酸、ヒ酸鉛、ヒ酸カルシウムなどが木材防腐剤、殺虫剤、乾燥剤として用いられている。

シューレグリーン(亜ヒ酸銅)、パリスグリーン(アセト亜ヒ酸銅)は農薬のほかに、顔料としても使用された。有機ヒ素化合物のメチルアルシン酸(MAA)やジメチルアルシン酸(DMAA)は除草剤に、フェニルアルソン酸塩などの芳香族ヒ素誘導体は家畜飼料の添加物として用いられている。


中毒症状・毒性
3価の無機ヒ素は、種々の生体細胞酵素の活性部分に存在するチオール基(SH基)と親和性が高く活性を阻害し、強い生体毒性を示す。

5価の無機ヒ素の毒性は明確にされてないが、SH基との親和性が弱く体外排泄が速いことや毒性が発現する前に3価ヒ素へ還元される可能性が強いことから、3価ヒ素より毒性は弱いと考えられている。

ヒ素はリン酸と化学的性質が類似しているため、競合やリン酸基との置換が起こり、その働きを阻害する。

ヒ酸塩は酸化的リン酸化を脱共役することが示されている。
有機ヒ素化合物の毒性は、ラットを用いた急性毒性試験によると、MAAのLD50は2800mg/kgで、無毒と考えられる値である。

一般に有機ヒ素化合物の毒性は弱い。
アルシンの毒性は溶血作用で、ほかのヒ素化合物にはみられない。

赤血球に侵入したアルシンは過酸化脂質を生成し、これを無毒化するためにグルタチオンペルオキシダーゼが働き、還元型グルタチオンが消費される。

そのため還元型グルタチオンによって維持されていた赤血球膜のNa‐Kポンプの平衡が崩れて赤血球中に多量のNaが流入し、溶血を起こす。
ヒ素中毒はその成因によって職業性と非職業性とに区別され、また曝露期間によって急性、亜急性、慢性中毒に分類される。

急性ヒ素中毒は無機ヒ素による場合が多く、亜ヒ酸による服毒自殺や、無機ヒ素が混入した飲食物の摂取で発生している。

臨床症状として、重篤な胃腸障害(腹痛、嘔吐)と頻脈を伴う。
慢性ヒ素中毒は、色素沈着症、角化症、多発性神経炎、気管支肺疾患、末梢循環障害などの症状が多発した。


代 謝
哺乳動物は一般に生体内で無機ヒ素のメチル化を行うことが知られている。

メチル態のヒ素は低毒性であることから、無機ヒ素のメチル化は生体の解毒機構であると考えられる。

メチル基転移反応は主に肝臓で行われると考えられている。

また、5価の無機ヒ素より3価のほうが肝臓でのメチル化を受けやすい。メチルヒ素化合物から脱メチル化は起こらないと考えられている。
摂取と排泄については、特別な曝露のない場合、体内に分布するヒ素は食事を解して摂取される。

日本人は1日に約200μgのヒ素を摂取しており、ヒ素の化学形態は食品によって異なるが、無機ヒ素はどの食品からも検出される。
ヒ素排泄の主ルートは腎臓で、そうヒ素排泄量の76%が尿中へ、残りは糞便中に排泄される。
放射性同位元素を用いた実験で、ヒ素はすべての組織に分布しており、組織別総ヒ素量としては筋肉が最も多いことがわかっている。

無機、有機を問わず、ヒ素化合物を動物に経口投与すると、肺、腎、脾臓に蓄積が認められた。

特に肺に顕著であった。

5価の無機ヒ素は骨中のリン酸とヒ酸の置換が起こるため、骨にも蓄積する。

3価ヒ素は毛や爪のSH基と結合して蓄積する。


食品衛生上の注意点
ヒ素は微量ながら多くの食品に含有されている。

食品を湿式灰化後、あるいはヒ素定量装置で定量すると、値が得られるが、ヒ素は存在形態により毒性が大きく異なる。

従って検出したヒ素の毒性評価をする場合、どのような存在形態であるかを留意する必要がある。


食中毒事例
1) 昭和23年5月 群馬県において「大福餅」により中毒。

患者43名。

症状は軽度の腹痛、嘔吐、吐き気を呈した。

原因は餅の打粉にヒ素が混入していたためと判明した。

2) 輸入錐豆」による中毒。

兵庫県において米の代替て配給されたビルマ産経豆により31名が中毒した。

嘔吐、腹痛、下痢、けいれん等、この豆はサルタニ豆100g中49.6~52.9mgの亜ヒ酸を検出した。

3) 鳥取県の中学校において「ドーナツ」 により41名の生徒が食中毒。試験の結果、ドーナツからヒ素と鉛を検出。

原因はメリケン粉に農薬のと酸鉛を混入したことによる。
昭和26年 1月 鳥取県において「ドーナツ」により41名が中毒を起こした。

症状として頭痛、倦怠感がある。「ドーナツからヒ素が0.08%と鉛が検出され、原因は誤って農薬であるヒ酸鉛を混入したことによる。

昭和26年7月に広島県でヒ素による中毒があり20名が中毒を起こし、2名が死亡した。

ヒ素が0,2ppm以上含まれる食品