・(3)共通する毒性と特徴的な毒性
以上のような毒性に加え、溶剤によってはそのものに特徴的といえる障害を引き起こすことがあります。
発ガン性についてはベンゼン(サンダルのゴムのりに用いられた)の白血病、再生不良性貧血があまりに有名です。
またトリクロルエチレン、パークロルチレン(クリーニングなどで使用)は使
用量も多く今後問題になると思われます。
n-ヘキサンの末梢神経障害(手足のしびれ)、トルエンやトリクロルエチレンによる脳の萎縮や脳波異常、トルエン、スチレン、パークロエウエチレンによる視力低下、視野狭窄、トルエン、クリーニングソルベント、灯油による貧血などは有名です。
シンナー、塗料に使われているセロソルブ類が精巣萎縮(男性の不妊症)を起こすこともあり十分注意する必要があります。
トリクロルエチレンと腸管ノウ腫様気腫(腸に袋が多発し腹のはりや粘血便を示す)との関係や、1,1,1-トリクロルエタンやテトラクロルエチレンによる過敏性肺炎の例もあります。
《使用職場での問題点》
溶剤の急性中毒は立証が比較的簡単ですが、慢性中毒は実証が困難で、多くの患者が潜在し、職
業病と診断されずに治療を受けていることが予想されます。下がっれ使用職場では慢性中毒の可能
性を厳しくチェックする必要があります。
おおざっぱに職種、職場を分類すると以下のようになります。
①有機溶剤の製造、
②有機溶剤含有物の製造(塗料、インク、接着剤、洗浄剤、払拭く剤など)
③有機溶剤(含有量)の使用
問題なのは
1.溶剤を使っていると知らされていない、知らされていても有害物とは知らされていない場合
センターの相談に来た例でも有害物表示や安全教育をしていた会社は少なく、いろいろ聞いてやっと有機溶剤を使っていることがわかることもあります。
汚れがよくとれたり臭う液はほとんど有機溶剤ですから、仕入れ先や製造会社、缶などの容器の表示を確認して何を使っているのか知っておく必要があります。
2.混合溶剤として使っているのが大多数で何をどれくらい含んでいるのかわからないことが多い(企業秘密)。
混合溶剤では層状作業で毒性が強くなる可能性が高いとともに労災認定に当たっては「塗料中毒」「シンナー中毒」でなく「トルエン中毒」等の単剤名で認定する傾向があり混合溶剤では労災認定されにくくなってきているという問題があります。