・2.有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質リストの見直しについて
2.1 基本的な考え方
有害大気汚染物質は、大防法第2条第13 項の規定により、「継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある物質で大気の汚染の原因となるもの」とされており、その施策は、同法第18 条の20 の規定により、「科学的知見の充実の下に、将来にわたって人の健康に係る被害が未然に防止されるようにすることを旨として実施されなければならない」とされている。
また、有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質リストは、第二次答申において、長期毒性を有することや大気汚染の原因となり得ることを科学的に明らかにすることは実際上困難を伴うものが多いが、未然防止の見地から、一定の割り切りを行って、有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質を広く選定することとされている。
今般の見直しに当たっては、その考え方を踏襲し、発がん性、吸入慢性毒性などの有害性を有しており、かつ、大気濃度測定での検出や、PRTR 制度において大気への排出が確認されていること等、一定の曝露性があり、大気経由での健康影響の可能性がある物質を選定することとする。
一方、化管法は、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的としており、その対象物質として、人の健康を損なうおそれ等があり、相当広範な地域の環境に継続して存すると認められる又は存することとなることが見込まれる化学物質が選定されている。
このように、有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質並びに化管法第2条第2項の規定による第一種指定化学物質及び同条第3項の規定による第二種指定化学物質(以下「化管法対象物質」という。)は、人の健康(化管法は生態影響も含む)に係る被害の未然防止を目的に、排出状況の把握、自主的な排出抑制や管理の改善を求める物質として位置づけられている点で類似しており、対象物質の選定の考え方にも共通点があることから、有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質リストの見直しに当たり、それぞれの特性に留意しつつ、化管法対象物質との整合性を図るよう見直すこととする。
ただし、物の燃焼等により非意図的に生成される物質については、ダイオ
キシン類以外の物質は現在の化管法対象物質に含まれていないため、諸外国における規制等を参照し、別個に選定することとする。
2.2 選定基準
以上の考え方を踏まえ、以下のいずれかの要件に該当する物質を「有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質リスト」として選定する。
ただし、大気汚染防止法の規制対象物質(①硫黄酸化物、②窒素酸化物、③鉛及びその化合物、④カドミウム及びその化合物、⑤塩素及び塩化水素、⑥弗素・弗化水素及び弗化珪素、⑦石綿)及び主として短期曝露による健康影響が問題とされる物質(専ら農薬として使用される物質及び大気中において有害性の低い物質に容易に変化する物質)を除く。
(1)化管法対象物質のうち、以下のいずれかの有害性クラスに該当する物質であって、
(ア)過去10 年間において大気中からの検出例があるもの
(イ)過去10 年間において大気中からの検出例はないが、これまでに化管法第5条第2項の規定により大気中への排出量の届出があるもの。(注)
有害性クラス
① 発がん性 ② 変異原性 ③ 生殖/発生毒性(催奇形性を含む)
④ 吸入慢性毒性 ⑤ 作業環境許容濃度から得られる吸入慢性毒性
⑥ 感作性 ⑦ 経口慢性毒性(吸入毒性の情報が得られたものに限る)
(注)平成20年11 月に公布された改正化管法施行令において新たに化管法第一種指定化学物質に選定された物質は、現時点では、排出量等の把握・届出がまだ実施されていないが、未然防止の観点から、大気中への排出の届出があるものと同様に扱う。
(2)現行の有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質リストに列挙されている物質のうち、化管法対象物質に該当しておらず、(1)に掲げたいずれかの有害性クラスに該当する物質であって、
(ア)過去10 年間において大気中からの検出例があるもの。
(イ)過去10 年間において大気中からの検出例はないが、年間製造・輸入量が100 トン以上であるもの。
(ウ)過去10 年間において大気中からの検出例はないが、物の燃焼等により非意図的に生成されるもの。
(3)(1)又は(2)に該当する物質以外で、物の燃焼等により非意図的に生成される物質であって、諸外国における規制等の対象となっている物質等のうち、(1)に掲げた有害性クラスに該当する物質。
(4)現行の有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質リストに列挙されている物質及び化管法対象物質のうち、(1)に掲げた有害性クラスには該当しないものの、製造・輸入量及び大気への届出排出量が非常に多く、広く大気中で検出される可能性があり、大気を経由して人への健康影響の可能性がある物質。