・(4)化学物質の特性等に応じた様々な対策手法の必要性
化学物質は、多様な用途に用いられ、製造・輸入から使用、リサイクル、廃棄に至るライフサイクルの各過程で環境に排出される可能性があり、その有害性や環境中での挙動も一様でないことから、化学物質の特性に応じてライフサイクルの各段階で様々な対策手法を組み合わせて用いる必要があります。
事業者の自主的取組と行政によるチェック、情報公開、基盤整備を組み合わせた柔軟な手法から、製造、使用、排出等の規制に至る様々な手法を駆使し、消費者、事業者等の各主体がリスク低減に向けた行動を取るようにすることが課題となっています。
生態系保全に関する化学物質対策は、第二次環境基本計画以降、化学物質審査規制法における規制の導入、農薬の評価手法の見直し、水質環境基準の設定等で進展を見ましたが、評価の対象となっている特定の生物への影響と生態系保全の関係についての考え方、水域以外の生態系の保全のための影響評価の手法、用途・使用形態に応じた管理の考え方等が必ずしも十分に確立しておらず、その発展が必要です。
さらに、アスベスト問題等の経験を踏まえ、国際的な動向の把握や関連情報の共有を通じ、環境リスクを見逃さないような対策を講ずるとともに、情報公開の徹底により、国民の信頼を確保することが重要です。
(5)「安全」と「安心」のギャップ
化学物質の環境リスクの低減を通じてより安全な社会を実現することに加え、化学物質の安全性についての国民の理解が進み、国民が安心できる社会を実現することも重要な課題です。
例えばダイオキシン類や内分泌かく乱作用の問題では、最新の科学的知見に基づいて想定される環境リスクと国民の不安との間に、大きなギャップが見られました。
化学物質による環境リスクを完全になくすことは不可能であり、環境リスクに関する情報・知識を関係者が共有し、情報に関する共通の理解と信頼の上に立って、社会的に許容されるリスクについての合意形成を図る必要があります。
(6)国際的な課題に対する我が国からの情報発信
近年、化学物質対策は国際的な要素が強くなっています。
東アジア地域等の中進国では化学物質の製造・使用量が急激に増加しており、適切な化学物質管理手法を確立することが急務となっています。
また、国際貿易を通じて世界経済が一体化していく中で、他国における化学物質規制が、化学物質やそれを含む製品を輸出する我が国に及ぼす影響が大きくなってきています。
例えば、欧州における製品中の有害物質規制や、事業者による化学物質の安全性評価の義務化等の検討が、我が国の企業の化学物質管理にも大きな影響を与えるようになっています。
さらに、地球規模での、又は国境を越える問題の解決に向け、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約等、国際的な対策の枠組みの整備が進んでいます。
また、化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)の導入も国際的に合意されています。
こうしたグローバル化の流れの中で、他国の動向に受動的に対応するだけでなく、我が国の化学物質管理制度、事業者や国民の取組等の情報発信を積極的に行うとともに、共通の課題への国際協調の下での対応を通じ、国際的な調和が図られた化学物質管理の確立に向けて、国際貢献を進める必要があります。