(1)症状及び原因関連因子の把握
現在いわゆる「化学物質過敏症」が、臨床症状と検査所見の組み合わせのみから診断され、化学物質の関与が明確にされていない場合があることは、学校現場における対策の立案・実施を困難にする要因となりかねません。
いわゆる「化学物質過敏症」に関して専門的な知見を有している病院があります。ま
た、地域の保健所において「シックハウス症候群」及びいわゆる「化学物質過敏症」に対する対策室等がある場合があり、医師等の情報を有している場合があるので活用することが求められます。
学校内において児童生徒等が過敏に反応する化学物質を把握するためには、症状が出るまでの当該児童生徒等の行動範囲や接触物について養護教諭及び学級担任が経過観察することも有効であると思われます。
その結果を管理職・学校医・主治医に報告できるように記録を取ることにより以後の対策に役立つと考えられます。
いわゆる「化学物質過敏症」は、その症状や原因物質が一人一人異なり、重篤な症状を呈する場合もあることから、当該児童生徒等の主治及び学校医の指導の基に危機管理も含めた個別の健康管理計画を作成することも有効であると考えられます。
なお、いわゆる「化学物質過敏症」の発症機序は、いまだ明確になっておらず、化学物質以外にも様々な要因の関与が示唆されていますが、特に精神的なストレス等によりいわゆる「化学物質過敏症」と類似の症状現れることが知られています。
化学物質の関与が明確でない場合には、養護教諭やスクールカウンセラーといわゆる「化学物質過敏症」を有すると考えられる児童生徒等との面談が有効である可能性があります。
(2)原因物質と考えられるもの
学校環境では、以下のようなものから化学物質の放散が考えられます。すでに過敏に反応する化学物質が判明している児童生徒等に対しては、学校の中でその物質を放散する可能性のある備品等の取り扱いには配慮してください。
(3)重症度に応じた対応
いわゆる「化学物質過敏症」の症状には個人差があり、その程度の差も大きいことから、学校には、重症度に応じた対応が求められます。
また、当該児童生徒等については教育委員会等に報告し、今後の対応について事前に相談しておくことも大切です。
今までにいわゆる「化学物質過敏症」と考えられる症状の発現を経験している児童生徒等の受け入れに際しては、当該児童生徒等の保護者、主治医及び学校医等から症状に対する対処方法等の指示を受けておき、そのことについてすべての教職員が共通理解し、暖かく見守り、対応できるようにしておくことが大切です。
症状の程度により、児童生徒等自身が対処方法(例えば、原因物質が判明していればそこから回避する、しばらく保健室で休養する又は早退する等)を判断ができる場合には、児童生徒等の選択を尊重して支援することも考えられます。
過敏に反応する物質や過敏反応のレベル、学校生活における配慮事項等を医師の診断や意見書等を基に、児童生徒等及び保護者とよく協議し、協議結果については「学校が努力すること、保護者が努力すること、児童生徒等自身が努力すること」等を文書で明確しておくことが勧められます。
さらに、学校が努力すべき事項について、全教職員の共通認識化を図っておくことが望まれます。
(4)保護者との協力体制
いわゆる「化学物質過敏症」に関する情報の混乱・不周知等により周りの十分な理解と協力が得られず、学習に困難をきたしている児童生徒等が存在し、当該児童生徒等の保護者は、学級担任、学校及び教育委員会等にどのような対応を求めればよいか苦慮しているケースがあります。
上述したようにいわゆる「化学物質過敏症」を有する児童生徒等への対応は、その重症度により異なります。
したがって、保護者に対しては、学級担任等で対応できること及びできないこと、学校全体として取り組めること及びできないこと、並びに転校や訪問教育等の教育委員会の関与が必要なことを可能な限り明確に伝えることが大切です。
そのためには、症状が軽度であっても学級担任等のみが対応するのではなく、学校全体問題としてとらえ管理者である校長及び養護教諭等とともに対応することが望まれます。
一方、学校は、いわゆる「化学物質過敏症」を有する児童生徒等に対する適切な支援活動を立案・実施するためには保護者から十分な情報提供を受ける等、相互の協力体制を構築することが大切です。
特に以下の情報について確認することが望まれます。
: 当該児童生徒等の発症時の症状とその経過、症状が出たときの処置及び対処方法、原因物質と考えられるもの、主治医の連絡先等について情報を得ておくことが大切です。
:当該児童生徒等が学校において症状が認められた場合には、保護者とすぐに連絡が取れる体制を整えておく必要があります。
特に児童生徒等を病院に搬入する場合には、保護者の了解と協力を仰ぐことも必要となります。
:支援活動について協議の場を設け、保護者の希望を十分確認してください。内容によっては教育委員会等に相談し検討することが必要となります。
: 校外行事等の特別活動において原因物質に接触することが予想される場合は、事前に現地の様子を調査し、保護者・主治医・学校医等と共にその対応策を検討し、引率者に周知することが必要です。
また、必要に応じ現地の下見に保護者の同伴を依頼することも大切です。
【参考URL】
? 厚生労働省「シックハウス対策」
(http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/situnai/sickindex.html
)
? 国土交通省「建築基準法に基づくシックハウス対策について」
(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/sickhouse.html
)
? 環境省「保健・化学物質対策」
(http://www.env.go.jp/chemi/index.html#kagaku
)
? 経済産業省「化学物質排出把握管理促進法に基づくMSDS 制度について」
(http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/msds/msds.html
)
? 愛知県教育委員会「学校における室内空気中化学物質対策マニュアル」
(http://www.pref.aichi.jp/kyoiku/kenkogakushu/sickhouse.html
)
? 埼玉県教育委員会「県立学校のシックスクール問題対応マニュアル」
(http://www.pref.saitama.jp/A20/BT00/kenkou.html
)
? 大阪府シックハウス対策庁内連絡会議「子どもにも配慮したシックハウス対策マニュアル」
(http://www.pref.osaka.jp/kankyoeisei/sickhouse/sickhouse_m.html
)