環境汚染問題 私たちと子どもたちの未来のために
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・香料の健康影響
2010年6月6日 渡部和男 bandaikw@sala.dti.ne.jp
要約
香りの好みには個人差が大きく、全ての人が好む香水はありえない。
香料には様々な種類があり、その数は4000 種類を越す。
しかし、香料は喘息を誘発する物質から神経毒物や発癌物質まで含んでいる。
化粧品は成分を容器などに記載することになっているが、香料の個々の成分は企業秘密であると見なされ、表示されていない。
また香水などには香料以外にフタル酸エステルのような添加物を含む。
フタル酸エステルと健康との関係は今後の別報告で述べる。
ムスクは血液脳関門を容易に通り、脳内に高濃度で残留し、その代謝も遅い。
そのため高齢者の血中ムスク濃度は高い。
これは高齢者がドライスキンのためにパーソナルケア製品を多用するからだと言われる。
血中濃度は香水やデオドラント、シャンプーの使用頻度と関係するという。香料を添加した日用品があふれており、合成ムスクは母乳中からも検出されている。
香料はアレルゲンとして働く。香料がアレルゲンとして大きくかかわることから、過敏性を検査するパッチテスト用のアレルゲンシリーズが販売されている。
アレルギーの接触皮膚炎をパッチテストで調べたところ、欧州では人口の1%が陽性であり、皮膚科患者の調査で10%が陽性であった。
日本でも患者の陽性率はほぼ同程度の9.2%であった。
最近はアロマテラピーの流行によると思われるラベンダーオイルへの陽性率が高くなってきた。
児童の喘息罹患率は近年常に増加し続け、5%に達している。
香料は喘息を誘発したり、悪化させたりすることが知られているので、喘息患者は香料を避けるように勧められている。
アレルギー体質でなくても香料にアレルギー様の反応がおきる場合が知られている。
この一因として、香料がアレルゲンとして作用する以外に、白血球に直接作用してヒスタミン放出を亢進させるメカニズムがあると報告されている。
香料には内分泌かく乱作用を持つ物質がある。
合成ムスクは女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの受容体に作用する。
女性ホルモン系以外に男性ホルモン系に対しても影響を及ぼすと報告されている。
香料には変異原性を持つものがある。
合成ムスクが変異原性を持つと報告されている。
香料には合成物質以外に天然由来の物質もあるが、そのどちらでも発癌性が報告されている。
自然界に存在するクマリンは、マウスで肺癌や肝臓癌、胃の乳頭腫を起こす。
ベンジルアルデヒドは胃癌を生じさせる。柑橘類に含まれているリモネンはラットで腎臓癌を起こす。
石鹸から香水、食料まで広く使われている合成香料アリルイソバレレートは、ラットに白血病を、マウスにリンパ腫を発生させる。
生体には細胞内から異物を排出する能力があり、細胞に悪影響を与える物質を細胞内から少なくする。
この能力は農薬やムスクによって妨害を受けることが知られている。
変異原性や発癌性を持たないムスクが、他の物質の変異原性を強めたり、癌の発生を増加させたりすると知られている。
香料には環境中で容易に分解されない物質が存在する。
合成ムスクは分解されにくく、一般的な下水処理場に入ったムスクの約1/3 が未分解のまま放出される。
放出されなかったムスクは分解されたのではなく汚泥に吸着されたと考えられている。
ムスクは河川水や海水中でしばしば検出されている。
また、幼稚園やアパートの空気中からも検出されており、低レベルであるが感受性の高い未熟児や子ども、透析患者などへの影響が懸念されている。
日本では香料が何種類入っていても香料と記載すればよいことになっている。
EU では健康への影響が強い一部の香料の記載が求められている。