出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
ピコ通信第154号 2011発行
・5/24 ケミネット・シンポジウム―今こそ化学物質政策基本法の制定を
市街地・公共施設での農薬被害について
(千葉県在住 CS発症者)
--------------------------------------------------------------------------------
私は、十数年前に当時住んでいた団地で、斜め上の部屋の漏水と結露によって傷んだ壁の補修や塗装がきっかけで、化学物質過敏症を発症しました。私が発症してからは、生活全般にわたって有害なものに曝露しないよう心がけて生活してきましたが、3人の子どものうち、長女だけが約4年前に小学校の書道で使用する墨汁がきっかけで発症してしまいました。
娘は、教室にワックスを塗布しない、換気をする、農薬散布を行わないなどの学校の様々な対応のおかげで、頭痛などの症状はあるものの、現在はあまり休むこともなく通学しています。
本日は、CS発症者の一母親として、特に農薬の散布による被害についてお話したいと思います。
■保育園の砂場の上の桜にも農薬散布
数年前の話になりますが、休日に子どもが近くの公園で遊んでいたところ、急に気分が悪くなり、帰ってきました。
その後、鼻血がでて、なかなか止まりませんでした。
何が原因かその時はわからなかったのですが、後日、50メートルほど先にある保育園で桜の木に農薬を散布していたことがわかりました。
その桜の木の下は砂場になっています。
散布翌日から園児が遊ぶところで、有機リン系農薬が散布されていたのです。
屋外の植栽や家庭菜園などには「住宅地等における農薬使用について」や「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」があります。
これには、害虫の早期発見、物理的防除(捕殺や剪定,焼却)の優先、定期散布の禁止、散布の事前周知などが書かれています。
しかし、散布当時、市の保育園を管理する担当課はこの通知もマニュアルも知らなかったことが後にわかりました。
樹木等への薬剤散布による健康被害は、CS発症者だけに限られたものではありません。
先日も、娘が下校途中、庭木に薬剤が散布された直後と思われる家の前を通ったとき、娘だけでなく、一緒にいた同級生も気分が悪くなったといいます。自宅周辺で散布された薬剤が原因で頭痛や吐き気がするという人は私の周りに何人もいます。
その人たちの症状は軽く、私達発症者と違って散布場所から離れると症状が改善することから、公共機関に相談することなくすんでしまいます。
しかし、間違いなく、健康被害はおこっているのです。
■図書館など施設内でも農薬散布
問題は屋外だけではありません。施設の中でも薬剤が使用されています。
2年ほど前のことになりますが、近くの図書館に行ったところ、入ってすぐに嫌な感じがしました。
娘も変なにおいがすると言ってすぐに図書館を出ましたが、体がだるくなり、起きられなくなってしまいました。
このときもすぐにはわからなかったのですが、後に有機リン系の農薬が使用された翌日だったことがわかりました。
図書館は幼児や児童も頻繁に利用する施設です。
そういう施設内でPRTR法第1種に指定されているような危険な薬剤を使用してもよいものでしょうか。
建物内については、2003年に改正された「建築物衛生法」では、生息調査が義務付けられています。
また、「建築物における維持管理マニュアル」には日常的に乳幼児がいる区域では、薬剤散布を避けることなどが書かれています。
それが、周知徹底されていないのです。
■千葉県内22市町調査でも違反事例
このような例は少なからずあります。
私が参加している「有害化学物質から子どもの健康を守る千葉県ネットワーク」では、千葉県内の22市町に使用している化学物質(主に農薬)についてのアンケートを行い、冊子にまとめました。
これをみると、事前に周辺に周知することなく、農薬が散布されていたり、1000倍に薄めて使用しなければならない農薬を800倍の濃度で散布していたり、有機リンを2種類混ぜて散布していたり、公民館などで施設全体に年2回漫然と定期的に同量を散布していたりといった事例がありました。
昨年、CS発症者で国に要望書を提出したときにも、農林水産省の担当者は「農薬は適正に使用すれば、安全で何ら問題ない」との一点張りでしたが、その適正使用すらされていないのが現状です。