出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.htm
大気中微細粒子の毒性は活性酸素による
大気中浮遊微粒子濃度の増加がヒトの死亡者数や入院患者数の増加に関係することは, 既に明らかとされており, 直径 2.5 μm 未満の微粒子 (PM2.5) 濃度に対する規制が行われている.
PM2.5 と高死亡率の因果関係は既に明らかとなっているが, PM2.5 のどの成分が最も影響を及ぼすかについては明らかではない.
最近, 微粒子が活性酸素種を産生することが明らかにされ, この活性酸素が肺や心循環器系に障害を引き起こすようである.
活性酸素の産生源としては粒子による好中球活性化や粒子自身またはその構成成分による直接の生産がある.
産生されるスーパーオキシド (O2-) は過酸化水素 (H2O2) を作り, 鉄などの金属イオンと反応してヒドロキシラジカル (・OH) を産生する.
ヒドロキシラジカルは脂質, 蛋白だけではなく細胞核にも障害を起こすことが明らかとなっている.
タバコのタールや紫煙の健康影響のいくつかはスーパーオキシドやヒドロキシラジカル産生につながる, 活性酸素の産生によると考えられるものがある.
燃焼により生ずる微粒子は安定性の高い活性酸素を含んでいるが, 微粒子の主要な産生源がディーゼル排気粒子 (DEP) であることを考慮すると, PM2.5 も活性酸素を含んでいるものと考えられる.
電子常磁性共鳴 (EPR) による測定が石炭, 木炭および煤煙について行われてきたが, PM2.5 については未だ行われていない.
最近, 燃焼排気にセミキノン系ラジカル産生を引き金とした, 活性酸素を介した障害作用があるということが幾つか報告されている.
セミキノンは安定したラジカルであり, 酸化還元サイクルを通して酸素を還元してスーパーオキシド, 過酸化水素およびヒドロキシラジカルを産生する.
本報告では, 米国の5か所 で採取した PM2.5 リン酸緩衝生理食塩液抽出液の EPR による測定結果と2種の培養細胞 (K562:骨髄性白血病細胞, IB3-1:ヒト肺上皮細胞) を用いたコメットアッセイによる DNA 障害作用, さらにファージ超コイル DNA に対する障害作用について報告している.