・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin03_53_07.html
NEWS LETTER Vol.69
・長野県の農薬空中散布をめぐって 運営委員 田坂 興亜
反農薬東京グループの河村宏さんから「長野県が、農薬の空中散布をめぐってパブコメを行っているので、応募したらどうですか」という呼びかけがあったのが、私たちがこの問題に関わるきっかけだった。
「松枯れ防止」ということで、過去30年以上続けられてきた農薬の空中散布が、有機リンに対する批判が多くなってきたこともあってか、ネオニコチノイド系の農薬に換えようとする動きもあることから、ネオニコ問題の対象にもなってきた。
長野県のパブコメ要請への対応
長野県の公式ホームページでは、1)「松くい虫防除のための農薬の空中散布の今後のあり方検討の中間報告(案)」と、2)「農作物に対する無人ヘリコプターを利用した農薬空中散布の今後のあり方(案)」の二つの報告に対するパブコメが求められていた。
このうち、第一のパブコメとして添付されている報告の中に、「農薬空中散布の有効性」を示すものとして、「空中散布実施松林と非実施松林の比較(茨城県旭村の例)」と称する1980年の農林水産航空協会資料を出典とする写真が掲載されている。
この写真には、S字型に引かれた線をはさんで、片方は緑一色、もう一方は、無残に枯れた松林が写っている。
30年前に写された写真を示して、「農薬空中散布の有効性」を主張するこの報告書は、1976年に「松枯れ防止法案」が国会で議決されたときの状況を思い起こさせる。
1977年9月13日の朝日新聞によれば、松枯れ防止に農薬散布が有効であることを示すデータとして国会に提出された資料には、「その後の調べで、林野庁が改ざん、捏造したり、調査もせずに調査したと発表したものなどが多数含まれていて、信用できない」という指摘が当時の社会党の国会議員から出され、当時の鈴木農林大臣は、「間違いの事実を認め、それが資料整備の段階での事務的な間違いであったとしても、心から申し訳なく思う、と謝罪すると同時に実情を調査することを約束した。
しかし、鈴木農相は、当面空中散布を続行する方針を明らかにした」と報道されている。
こうした改ざん、捏造されたデータを根拠にして成立した農薬空中散布の法律は、その後、成立時点での疑点を晴らすことなく何度も延長されて、日本の全土でスミチオン(フェニトロチオン)の空中散布が30年以上も続けられてきたのである。
農薬の空中散布を30年以上も続けたのに、今なお松枯れが続いていること自体、この方法に効果がないことの証ではないのか?
農薬企業に莫大な国家予算が流れ込むこの事業を続けさせているのは誰なのか?
長野県庁による説明
上記のようなことをパブコメとして準備していたとき、「4月5日に長野県庁で、農薬の空中散布に関して説明する」と、上田市で農薬空中散布の中止を訴えてきた田口操さんに連絡があったので、私たちは田口さんや筑波大学の名誉教授で、松林の生態系を長年研究してこられた林一六先生と合流して、長野県庁に行った。
一通り県庁側からの説明を聞いたあと、林先生が「私は長年松の研究をしてきたが、松というのは、ある年月がたつと自然に枯れ始め、代わって、他の樹木が生い茂るのです。
この自然の営みを害虫のせいにして、農薬を散布することは大きな間違いです」と話され、根拠となる論文を添付してパブコメを提出したので検討してほしい、と付け加えられた。
続いて私たちが、1977年の朝日新聞を提示して、「松枯れ防止に、農薬散布が有効である」との根拠自身が虚構であったことを指摘し、ネオニコチノイド系農薬の使用は、ミツバチに壊滅的な影響を与え、また、人間の脳・神経系の発達にも悪影響を及ぼす可能性があるので止めてほしい、と「ネオニコパンフ」を配布して発言した。