イタリアにおける電磁波公害に対する法政策4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・3.イタリア、WHOの電磁波の法政策・対応


<イタリアにおける法政策の流れ>
1992年
 イタリア政府の閣議決定により、住宅地などでの極低周波電磁波への被曝限度が定められ、特に132キロボルト以上の送電線については、それらの送電施設と住居などの建物との間の(これ以上はなれた方がよいとする)最低距離が定められた。
●132キロボルト以上の送電線に対して10メートル以上離れる事
●220キロボルト以上の送電線に対して18メートル以上離れる事
●380キロボルト以上の送電線に対して28メートル以上離れる事

国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の1990年の指針を受けて、この政令 DPCM23/04/1992 にその被曝限度が採用された。


1995年9月
 上記の92年政令に示している、送電線からの距離の規定に関しては凍結し、その被曝限度(磁場強度100マイクロテスラ、電界強度5kV/m)のみが有効となる(政令 DPCM 28/09/1995)。


1998年9月
 イタリア政府(環境省)は暫定措置381/98政令により、家屋や学校内部において電界強度の上限を6V/mと基準として定めた。

先のヴァチカンラジオはそれを倍以上上回っていたが、人間が一日に4時間以上とどまる場所においてはこの値を越えてはならない。

4時間以下の場合は、100キロヘルツ~300ギガヘルツ間を3分割し、磁場強度0.05~0.2A/m、電界強度20~60V/mなどと定められた(DM 10/09/1998)。
 この法令に関しては150件以上の違反が摘発されたが、必要な行政手続きを欠いていたために起訴されたものは一つもなかった。


1998年~2001年
 上記の1998年・381政令にもとづき、イタリア環境保護庁(ANPA)、イタリア各州の環境保護庁(ARPA)などが、送電線、放送施設、携帯電話施設、などを環境調査し、152ヶ所の基準値超過地域(不法地域)を特定した。

しかし、この調査は全国的には完全には行われず、2000年の時点でイタリアに所在する施設は、ラジオ施設が約13000ヶ所、テレビ施設が21000ヶ所、携帯電話施設が約13000ヶ所であることから、電磁波汚染は深刻なものと考えられる。


2000年
 イタリアの環境省、厚生省、通信省などの省庁間作業部会は、「不法地域の環境回復のためのガイドライン」を発行した。


2001年1月
 法律5号(DL 23/01/2001)が成立し、上記の1998年・381政令の基準値を超えているラジオやテレビの施設の所有者の中で、各州当局の改善命令に従わない者への制裁を定めた。


2001年2月
 電磁波被曝を防ぐための枠組み法(法律36号)が成立。
 この法律では、電磁波からの防護のための一般的なアプローチと原則が定められた。

数的な安全基準値自体は、具体的には別の政令で定められることになっているが、特に被曝限度、注意レベル、質的な目標の3つが対策を取る上で考慮すべきであるとしている。

一般の人たちが電磁波に不当にさらされて、健康を損なうことがないように、国が周波数の大きさや電磁波の強さ、放出時間、発信元からの距離などいろいろな要素から、越えてはならないレベルを設定し、コントロールする。

この種の法律としては世界でも先進的な法律であるとの評価が高かった。
 また、予防原則を適用し、電磁波被曝の長期的影響に関する科学的研究を促進することが決められていた。
 さらに、電磁波を発するすべてを対象としており、特に、送電線、携帯電話の中継基地、レーダー、放送、に適用が予定されていた。

適用外は、医療目的や工業生産目的で被曝する場合のみであった。
 この法律の下で、実際には次のような政策が取られた。


電磁波汚染が深刻な国内の152箇所(ENELの送電施設、イタリアテレコムの関連施設、携帯電話用支柱型アンテナなど)を2年以内に正常化すべく、約150億円の予算が組まれた。

政府は2ケ月以内に放射量削減、学校や病院、職場といった公共の場所における最小放射量、及び送信設備設置場所に関するガイドラインを制定し、4ケ月以内に電気及び通信関連施設を網羅した電磁波汚染の地図を作る。

2年以内に、電磁波を発生する家電、電子機器製品はそのパッケージに使用中の電磁波、電界強度、安全に使うための使用時間リミット、使用距離などを明記することが義務付けられた。

テレビ放送用送信施設、移動通信用支柱型アンテナの所有者が、基準をこえる電磁波を放出した場合は、1000ユーロから30万ユーロの罰金が課せられる。

長距離送電線の電磁波汚染対策プランを半年以内にENELは提出し、10年以内に送電線施設の改修を行うことが定められた。

 しかし、具体的な数値を定めた政令は発行されず、枠組み法自体が宙に浮いた状態になる。