・血液検査の肝機能検査(AST値など肝逸脱酵素値)は、肝障害の診断(肝病変の量的変化の評価)には有用であっても、どう言う病気かの確定診断(肝硬変であると言う質的な変化の評価)には、役立たない。
肝硬変が末期になると、肝臓は線維化して、肝細胞量が少なくなるので、破壊される肝細胞量も少なく、血液中のAST(GOT)値、ALT(GPT)値は、むしろ、低下する。
肝硬変の三大死因は、肝不全、消化管出血、肝癌の合併。
アルコール性肝硬変では、肝臓に脂肪が蓄積し、他の原因による肝硬変に比して、肝臓が大きい(肝腫大)。
禁酒をすると、急速に肝腫大の程度が、軽減する。
肝硬変では、食事摂取量が減少し、亜鉛(Zn)が欠乏し易い。
肝硬変で門脈圧亢進症になると、小腸粘膜が萎縮し、小腸からの亜鉛吸収率が、低下する。
亜鉛は、血液中では、アルブミンや、α2-マクログロブリンや、アミノ酸などと結合して、輸送される。
肝硬変では、肝臓でのアルブミン生成が減少する為、アルブミン結合亜鉛は減少し、また、アミノ酸結合亜鉛は増加し、尿中への亜鉛排出が増加してしまう。
亜鉛が欠乏すると、肝臓での蛋白合成速度が低下したり、尿素回路に於けるアンモニア処理能が低下したり、細胞膜が酸化し易くなり(lipid peroxidationが亢進)、細胞膜が不安定化し、肝細胞障害や肝線維症(線維の増生)が起こり易くなる。
亜鉛は、コラーゲン合成にも必要なミネラルであり、亜鉛が欠乏すると、皮膚の傷の修復が遅れ、潰瘍などを形成することもある(昔から、亜鉛華軟膏など、亜鉛は、皮膚疾患の疾患の治療に用いられて来た)。
表1 食品中の亜鉛含量(可食部100g当たりのmg含量:五訂食品成分表2005より引用)
食品名 Zn Fe Cu Ca P
糸引納豆 1.9 3.3 0.61 90 190
木綿豆腐 0.6 0.9 0.15 120 110
凍り豆腐 5.2 5.8 0.55 660 880
精白米 0.1 Tr 0.02 1 7
食パン市販 0.8 0.6 0.11 29 83
うどん生 0.3 0.3 0.08 18 49
ごま乾 5.5 9.6 1.66 1200 540
さんま生 0.8 1.4 0.11 32 180
まぐろ赤身生 0.4 1.1 0.04 5 270
豚ひき肉 2.5 1.1 0.07 8 170
若鶏むね皮なし 0.7 0.2 0.03 4 200
若鶏もも皮なし 2.0 0.7 0.05 5 190
鶏卵全卵生 1.3 1.8 0.08 51 180
牛乳生乳 0.4 0.1 0.01 130 110
プロセスチーズ 3.2 0.3 0.08 630 730
たらこ生 3.1 0.6 0.08 24 390
しじみ生 0.42 5.3 0.42 130 86
牡蠣生 13.2 1.9 0.89 88 100
ほうれんそう生 0.7 2.0 0.11 49 47